
こんにちは、
りんとちゃーです。
カレンダーで目にする「January」「February」といった「英語の月名」。
小学校の英語の授業で習う、これら「英語の月名」は、ギリシャ神話やローマ神話、皇帝の名前・ラテン語の接頭辞などを語源にしており、暦における「週」の概念や「曜日」の名前もまた、ギリシャ・ローマ神話と深く関わりを持っています。
記事では以下のことをまとめています。
■事前知識(古代ローマの暦と月のズレ)
■英語の月名・週の概念・曜日名の由来
英語の月名の由来を学びながら、ギリシャ・ローマ神話の知識を深めていきましょう。
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■【日本の暦】『旧暦の月』の読み方・由来 一覧|「和風月名」の意味を知ろう
古代ローマの暦と月のズレ
現在私たちが使っている英語の月名は、実際の月と2ヶ月ずれていて、例えば英語の10月「October」は、「octo」がラテン語で「8」を意味するように、かつては『8月』のことを指していました。
実は、暦が初めて生まれた古代ローマ時代において一年は、今のように「12ヶ月」ではなく「10ヶ月」だったのです。
古代ローマで最初に使われていた「ロムルス暦」では、農閑期となる『1・2月(January・February)』は入っておらず、現在の3月(March)を始まりの月としていました。
その後、「ヌマ暦」が誕生し、現在でいう『1・2月(January・February)』が追加されます。しかし、この時の『1・2月』は年の初めではなく、後ろの11・12番目に位置していました。
この『ヌマ暦』と実際の太陽の運行とのあいだには若干のずれがあり、後の時代にそれを解消しようとして、ユリウス・カエサルが改暦を実施。『January』を最初の月と定め、1月1日を年初日とする『ユリウス暦』が導入されました。
現在私たちが使っている暦は、この「ユリウス暦」の精度をさらに高めた「グレゴリウス暦(※1)」にあたります。
(※1)グレゴリウス暦・・128年に1日ほどずれが生じていた「ユリウス歴」(1年=365.25日)を補正するために、ローマ法王グレゴリウス13世が1582年10月15日により制定した、より正確な暦(1年=365.24219日)のこと。現在、世界中でこの暦が使用されている。
以上のことを踏まえた上で、各英語の月名の由来について詳しく見ていきましょう。
英語の「月名」の由来
1月 January
「January」は、ローマ神話における最古の神「ヤヌス(Janus)」を由来とする月で、「ヤヌス」は時間・扉・門を司る天空神です。
「門」は始まりと終わりの象徴であり、ヤヌスの双面が前と後を見ている(=一つは若く未来を見つめ、もう一つは老いて過去を見つめている)ことにちなんで、行く年来る年を見守る神として、一年の最初の月の名に当てられました。
ちなみに「ヤヌス」は、ローマ神話の主神「ユピテル(※2)」並びにギリシャ神話の主神「ゼウス(※3)」と同一視されています。
(※2)ユピテル(Jupiter)・・ローマ神話の主神で、妻はユノ(Juno)。雷などの天候を司る天空神で、ギリシャ神話のゼウスに相当する。太陽系の惑星・木星(ジュピター)の名前の由来にもなっている。
(※3)ゼウス(Zeus)・・ギリシャ神話の最高神。豊かな髭(ひげ)をたくわえた威厳のある姿で描写され、彼が持つ「雷霆(ケラウノス)」は、全宇宙を破壊するほどの威力を持つ。女好きで、女神や人間の女性との間にたくさんの子どもを持つ。シンボルは空の支配者である「大鷲(おおわし)」。
2月 February
ローマ神話の月と贖罪の神「フェブルウス(Februus)」が由来で、古代ローマでは、毎年2月に、戦争で亡くなった戦士たちの霊を弔うために慰霊祭「フェブルアーリア(Februalia)」が行われていました。
「フェブルウス」はその主神となる存在で、死者や霊と関わりが深く、冥界の王「プルート(※4)」と同一視されています。
(※4)プルート(Pluto)・・ローマ神話における冥界の神。太陽系の惑星・冥王星(プルート)の象徴。ギリシャ神話のハデス(Hades)にあたる。名前の「プルート」は「富の所有者」を意味する言葉「Plouton(プルートン)」を語源にしていて、これは実りが地中(冥界)からもたらされることに由来する。ディズニーのミッキーマウスの飼い犬・プルート(1931年初登場)は、冥王星が発見・命名された年が1930年であることにちなんで名付けられたもの。
3月 March
「March」の由来となったのは、ローマ神話の軍神「マルス(Mars)※5」です。
「ロムルス暦」においての「3月」は一年の初めとなる月で、冬に中断された軍事作戦を再開する時期でもありました。そのため、戦いの勝利を願って、戦争の神である「マルス」を月名に取り入れたのです。
また「マルス」は、太陽系の惑星「火星(マーズ)」の名前の由来にもなっていて、これは、当時の人が火星の赤い外観に「戦争の火」や「赤い血」を連想したためだと考えられています。
(※5)マルス(Mars)・・ローマ神話における戦いの神で、ギリシャ神話の「アレス(Ares)」に相当する。ロムルス暦で一年の初めにあたる3月は、農業を始める時期でもあったため、農耕を司る神とも呼ばれている。火星を象徴する神で、火星と同じように赤く輝くさそり座のα星「アンタレス」の名前は「アンチ・アレス(アレスに対抗するもの)」が語源になっている。
4月 April
古代ローマでは、4月1日に、愛と美の女神「ヴィーナス(※6)」を称える「ウェネラリア(Veneralia)」が開催されていて、彼女と対になるギリシャ神話の神「アフロディーテ(Aphrodite)※7」が名前の由来になったと言われています。
また、気候が暖かくなる4月は、花が開いて生命の息吹を感じる季節でもあり、「開く・芽吹く」を意味するラテン語「Aperio(アペリオ)」が語源になったという説もあります。
(※6)ヴィーナス(Venus)・・ローマ神話の美と愛欲を司る女神で、美しい成人女性の姿をしている。海の泡の中から誕生し、貝殻に乗って風に運ばれ、キプロス島に辿り着いた。ボッティチェリの有名な絵画「ヴィーナスの誕生」はこの場面を描いたもの。太陽系の惑星・金星(ヴィーナス)の由来となった神で、ギリシャ神話のアフロディーテに相当。
(※7)アフロディーテ(Aphrodita)・・ギリシャ神話における愛と美の女神。海の泡から誕生したので、泡(=aphros)から生まれた者という意味でアフロディーテと呼ばれている。生物学的なメスを表す記号「♀」は、アフロディーテが自分の姿を見る時に使った手鏡を模したもの。(※オス「♂」は、アフロディーテの愛人であったアレスの槍と盾を組み合わせもの)
5月 May
ギリシャ神話における春と豊穣の女神「マイア(Maia)※8」に由来するという説や、5月が「年長者」を表す月で「man、major」などの年配を意味する言葉からとったなど、諸説あります。
(※8)マイア(Maia)・・ギリシャ神話において大地の実りを司る豊穣の女神。全能の神ゼウスの妻。毎年5月1日に古代ローマで、このマイアに供物を捧げ、春の訪れと豊穣を祝う祭りが行われていた。現在の5月1日に開催されている労働者の祭典メーデー(May Day)はこれに由来するもの。
6月 June
結婚・出産を司る女神「ユノ(Juno)※9」がその名の由来で、「ユノ」はゼウスの正妻で、ローマ神話においてはユピテルの妻にあたります。6月に結婚すると幸せになれる「ジューン・ブライド」の言い伝えは、この女神「ユノ」にちなんだものです。
6月は、5月とは逆に「若者」を意味する月にあたり、名前の「June」は、若輩者を表す「Junior」からとったのではないかとする説もあります。
(※9)ユノ(Juno)・・結婚・母性・出産を司るローマ神話の女神。ユピテルの妻。女性の守護神と言われていて、月との関わりも深い。ギリシャ神話ではゼウスの妻ヘレにあたる。ユノには「モネータ(moneta)」という別名があり、ローマに存在する「モネータ神殿」はその名前からとったもの。「モネータ神殿」は後の時代に「貨幣鋳造所」に変わり、そこから英単語の「money=貨幣」が生まれた。
7月 July
「7月」は、もともとは5番目を表す月で「Quitilis」と呼ばれていましたが、後に、ローマの英雄「ユリウス・カエサル(Lulius Caesar)※10」が暗殺。彼への敬意と畏怖を込めて、カエサルの誕生月「Quitilis」が「July」(=Luliusの英名)へと改められました。
(※10)ガイウス・ユリウス・カエサル(Gaius Lulius Caesar)【紀元前100年~紀元前44年】・・英名はシーザー。共和制ローマ時代の政治家・軍人で、ポンペイウス・クラッススとともに第一回三頭政治を結成。独裁的な支配を行ったことにより共和派の反感を買い、暗殺される。「賽は投げられた」「ブルータス、お前もか」などの名言で知られる。
8月 August
もともとは6番目の月を意味する「Sextilis」の名で呼ばれていましたが、カエサルの後を継いで内乱を鎮め、初代ローマ皇帝となった「アウグストゥス(Augustsu)※11」へ敬意を示すために、後の時代に「August」へ改名されました。
(※11)アウグストゥス(Augustsu)【紀元前63年~紀元前14年】・・古代ローマの政治家で、ローマ帝国初代皇帝。前名は「オクタウィアヌス(Octavianus) 」。誕生月は8月。感情的な叔父のカエサルとは対称的に慎重な性格で、人から好かれるタイプだった。カエサルのように権力を持ちすぎて恨みを買うことを恐れ、常に市民の第一人者でいようとした。
9月 September/10月 October/11月 November/12月 December
9月~12月はどれも「ラテン語の数の接頭辞(=数詞)」からとったもので、9月「September」は「7」を意味する「septem」、10月「October」は「8」を意味する「octo」、11月「November」は「9」を意味する「novem」、12月「December」は「10」を意味する「decem」が語源になっています。
「週」の概念と「曜日名」の由来
月の英名の由来となったギリシャ・ローマ神話は、実は「週」の概念や「曜日名」とも深く関係しています。
まず「週」についてですが、月の満ち欠けに基づく「太陰暦(※12)」を使っていた古代バビロニア(=ギリシャ・ローマより前に繁栄したメソポタミア文明)では、新月から七日経つごとに休日が置かれていました。また、ユダヤの伝承に基づく旧約聖書の創世記には「天地を創造した神が七日目に休まれた」と記されています。
(※12)太陰暦(たいいんれき)・・月の満ち欠け(=月が地球のまわりを周る周期)を基準にした暦法。月が地球の影に隠れて見えなくなる新月の日を第1日目(朔日)とし、再び新月になるまでの約29.5日を1ヶ月、その12ヶ月分(約354日)を1年とする。
このような両者の「七日を一区切り」とする考え方が次第に地中海周辺地域に広まり、「週」の概念が定着していったと考えられています。
また、古代人が把握していた惑星の数と月・太陽を合わせると、ちょうど「週」の日数と同じ7つになり、それぞれと結びつきが強かった神話のイメージの影響を受けて、後の時代に「曜日名」が作られていくことになります。
以下は英語の曜日名と神話の関係の簡単なまとめです。
●日曜日【Sunday】・・ローマで「太陽神(Sol)の日」と呼ばれていたものを、ローマ北方のゲルマン民族が「太陽(Sunnan)の月」と翻訳したことに由来する。
●月曜日【Monday】・・ローマでの呼び名「月の女神(Luna)の日」をゲルマン民族が「月(Monan)の日」と訳したことが由来。
●火曜日【Tuesday】・・火星を象徴するローマの戦いの神・マルス(Mars)がゲルマン民族における戦いの神・テュール(古英語:Tiw)と同一視されて、テュールの日▶「Tuesday」となった。
●水曜日【Wednesday】・・水星を象徴する知略と冥界の神・メルクリウス(Mercurius)がゲルマン民族における聡明な死の神・オーディン(古英語:Woden)と同一視されて「Wednesday」となった。
●木曜日【Thursday】・・木星を象徴する天空神・ユピテル(Jupiter)がゲルマン民族の雷神・トール(古英語:Thunor)と同一視されて「Thursday」となった。
●金曜日【Friday】・・金星を象徴する愛の女神・ヴィーナス(Venus)がゲルマン民族の美の女神・フレイア(古英語:Frigg)と同一視されて「Friday」となった。
●土曜日【Saturday】・・土星を象徴するローマの農耕神・サトゥルヌス(Saturnus)の日が語源。ゲルマン民族の神に対応する神がいなかったので、そのまま原型を残して「Saturday」となった。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
英語の勉強となると、ともすれば単語の意味だけを覚えがちで、今回ご紹介した月の英名も、単純に丸暗記したという人が多いのではないでしょうか。
日本の旧暦名に由来・語源があるように、英語の月名にも元になった物語や歴史・背景が存在します。真の意味で言葉の理解を深めるためにも、多少面倒でも単語の由来や語源をきちんと調べて覚えるよう日々心がけたいものですね。
なお、日本の旧暦名(和風月名)については、他の記事でまとめていますので、興味のある方はそちらもご参照ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
▼日本の旧暦名の由来はこちら▼
■【日本の暦】『旧暦の月』の読み方・由来 一覧|「和風月名」の意味を知ろう
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■【暦の基礎①】「二十四節気・五節句・雑節」で知る季節の移ろい
■【暦の基礎②】「太陰暦・太陰太陽暦・太陽暦」の違いと日本の暦
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