
こんにちは、
りんとちゃーです。
3月3日(金)は、女の子の健やかな成長と将来の幸せを願って「ひな人形」を飾り付ける「ひなまつり」の日です。
中国の「上巳(じょうし)の節句」と、日本の「人形信仰(ひとがたしんこう)・雛(ひな)遊び」とが結びついて生まれた「ひなまつり」では、「ひな人形」や「菱餅」をひな壇に飾ったり、行事食として「草餅」や「ひなあられ」を食べたりします。
記事では、以下のことをまとめています。
■ひなまつりの起源・歴史
■ひな御膳(行事食と旬の縁起物)とひな飾り
■2023年3月のカレンダー【付録】
ひなまつりの雑学を学んで、知識のぼんぼりにあかりを灯しましょう。
ひなまつりの起源・歴史
「ひなまつり」の日である3月3日は、五節句(※1)の「上巳(じょうし)の節句」にあたり、別名を「桃の節句」と言います。
(※1)五節句(ごせっく)・・江戸時代に公的に定められた5つの節句(人日の節句【1/7】・上巳の節句【3/3】・端午の節句【5/5】・七夕の節句【7/7】・重陽の節句【9/9】)のことで、「節句(せっく)」とは、年中行事を行う季節の重要な節目を意味する。
「上巳」とは、旧暦3月の最初の「巳(み)」の日のことで、古代中国では、厄日となるこの日に水で手や口・足を洗い、人形(ひとがた)と呼ばれる自分の身代わり人形を川に流して穢れを払う風習がありました。
日本にも同じように人形を川に流す風習(=流し雛)があり、それが後に平安貴族の女の子の人形遊び(=雛遊び)と結び付き、私たちが知っている現在の「ひなまつり」の様式へ変化していったと言われています。
■豆知識①『桃(もも)の秘めた力』
「桃」は多くの実がなることから多産の象徴とされ、その生命力の強さから、不老長寿や魔除け・鬼払いの霊力を秘めていると考えられていました。日本神話においても、黄泉(よみ)の国でイザナミの恐ろしい姿を見てしまったイザナギが、追いかけてきた黄泉軍(よもついくさ)や雷(いかずち)に桃の実を投げ、撃退したという逸話が残っています。
ひな御膳
「ひなまつり」の日には、ひな御膳(行事食・旬の縁起物)として「菱餅」「草餅」「ひなあられ」「はまぐりの吸い物」「白酒」をいただきます。
菱餅(ひしもち)
ひな壇に飾る餅で、ひな人形のお供え物でもある「菱餅(ひしもち)」の起源は、上巳の節句に「母子草(ははこぐさ)※2」を入れた餅を食べて邪気を払ったという中国の風習にあります。
この風習が日本に伝わった際、「母と子をつく餅」では縁起が悪いからと「母子草」の代わりに「よもぎ」が使われることになり、その後、菱(ひし)の実を入れた「白い餅」とくちなしを入れた「赤い餅」が加わって、現在の「3色の餅」になったと言われています。
(※2)母子草・・道端で見かける小さな草で、別名を「ゴギョウ」という。春の七草の一つで、咳・吐き気止めの効能がある。ゴギョウの名は「仏体(=御形【ごぎょう】)」に由来する。
菱餅の3色にはそれぞれ次のような意味合いがあります。
●赤【クチナシ】・・魔除け・祖先を尊ぶ心(解毒作用)
◯白【菱の実】・・清浄、子孫繁栄(血圧降下作用)
●緑【よもぎ】・・健康、厄除け(増血作用)
※( )内は薬効
色は下から順に緑・白・赤とするのが決まりで、「雪(=白)の中から新芽(=緑)が芽吹き、桃の花(=赤)が咲く」という春の情景が表現されています。
草餅(くさもち)
「草餅」は「蓬(よもぎ)の葉を混ぜ込んだ餅、もしくは、その餅の中に餡(あん)を詰めたもの」のことを指し、一般的に関東では「草餅」、関西では「よもぎ餅」と呼ばれています。
その起源は、前述した「菱餅」のよもぎ(緑の餅)の項と同じで、強壮や消毒・止血効果があることから、古くから薬草としても使用されてきました。
ひなあられ
餅に砂糖をからめて炒ったお菓子の「ひなあられ」の4色は、それぞれ四季(春=赤、夏=緑、秋=黄、冬=白)を表していて、各色を食べることで「季節が放つエネルギーを体に取り込むことができる」と言われています。
由来となったのは、「ひなの国見せ(=ひな人形に野山や川辺などの春の景色を見せてあげること)」と呼ばれる江戸時代の風習で、この時にごちそうと一緒に持っていったのが「ひなあられ」でした。
白酒(しろざけ)
「白酒」は、みりんに蒸した米や麹(こうじ)を混ぜて熟成させたもので、邪気払いの効果があるとして、古くから中国では、これに桃の花を漬けた「桃花酒(とうかしゅ)」が飲まれていました。
「白酒」は、米麹などで作る「甘酒」とはまったく別のもので、アルコール分が10%近く含まれているため、子どもは飲むことはできません。
はまぐりのお吸い物
二枚貝である「はまぐり」には、ビタミンB2やカルシウムが多く含まれていて、貧血予防に効果があります。また、貝の蝶番(ちょうつがい)のところが同じ貝同士でしか合わないことから、夫婦和合のシンボルと考えられていました。
「はまぐり」をお吸い物としていただく際に、一つの貝に二つ分の身をのせる習わしがありますが、これは、貝の身を仲良く連れ添う夫婦に見立てたもので、女の子の将来の幸せを祈願する意味合いが込められています。
由来については諸説あり、一説によると、旧暦3月3日前後の大潮(おおしお)の日に、女性や子どもたちが海辺に出かけ、貝を採ったりお弁当を食べたりする習わし(=磯遊び)があって、そこで採った貝を神様にお供えした名残で、ひなまつりの日に「はまぐりのお吸い物」をいただくようになったと言われています。
ちらし寿司
「ひなまつり」に限らず、ハレの日に好んで食べられるごちそうの「ちらし寿司」には、「エビ・れんこん・豆」といった具材がよく使われていて、それぞれ「長寿・先を見通す・健康でマメに働く」の縁起が込められています。
より色鮮やかに見せるために、人参や卵・三つ葉などを加えることもあり、地域によっては「ちらし寿司」のことを「バラ寿司」「五目寿司」と呼んだりもします。
ひな飾り
「ひな飾り」は、平安貴族の婚礼の様子を模したもので、夜に行われた婚礼の儀に合わせて「雪洞(ぼんぼり)」を灯し、新郎新婦の「内裏雛(だいりびな)」、そのお世話をする「官女(かんじょ)」、護衛の「隋臣(ずいしん)」や宴を盛り上げる「五人囃子(ごにんばやし)」をひな壇上に並べます。
意味
人形信仰(=流し雛)にルーツを持つ「ひな人形」には、身代わりとなって厄を引き受ける意味合いがあり、ひな人形を飾ることで女の子が健やかに成長できると考えられていました。
歴史
「ひな飾り」がはじめて作られたのは室町時代で、紙や布を材料とした当時の「ひな人形」は、着物を着た立ち姿の男女一対の人形であったことから「立ち雛(たちびな)」と呼ばれていました。
「ひな人形」が座ったのは江戸時代のことで、江戸時代の後期になると、より精巧で華やかな装飾を施した「享保雛(きょうほうびな)」や、宮中の装束を表現した「古今雛(こきんびな)」が登場します。
その後、五人囃子や三人官女、添え人形が追加され、1700年頃には、貴族や武士だけでなく庶民の間にも浸透することになりました。
飾り方・並べ方
「ひな壇」の「ひな人形」と「ひな道具」の飾り方・並べ方についての厳格な決まりはなく、全体がバランス良く見えるように美しく並べれば良いとされています。
三段・五段・七段などの種類がある「ひな壇」のうち、五段の「ひな壇」の標準的な並べ方を以下にまとめましたので、教養として覚えておきましょう。
一段目(男雛・女雛)
最上段には「男雛(おびな)」と「女雛(めびな)」を飾り、男雛に「笏(しゃく)」、女雛に「檜扇(ひおうぎ)」を持たせます。
「男雛」を「お内裏様(だいりさま)」と呼ぶこともありますが、本来「お内裏様」は男雛と女雛の両方を指す言葉なので、厳密に言うと正しくありません。
また、関西と関東では「男雛と女雛の並べ方」が逆になるので注意してください。
「関西」と「関東」の男雛・女雛の位置は以下のとおりです。
▼関西▼
(向かって左:女雛 右:男雛 )
関西では日本古来の「左上位」の考え方にならい、ひな壇側から見た左(向かって右)が男雛となる。
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▼関東▼
(向かって左:男雛 右:女雛 )
二段目(三人官女)
二段目は「三人官女(さんにんかんじょ)」です。
「官女」とは天皇皇后の住む宮中に仕える女官(=身の回りのお世話係)のことで、向かって左から、「加えの銚子(お酒を注ぐ器)」「三宝(盃を載せる台)」「長柄銚子」を持たせます。
三段目(五人囃子)
三段目に飾るのは能楽を演奏する「五人囃子(ごにんばやし)」で、向かって左から「太鼓」「大皮」「小鼓(こつづみ)」「笛」「謡(うたい)」の順で並べます。左にいくほど音が大きい楽器になると覚えましょう。
四段目(随臣)
四段目は男雛を護衛する「随臣(ずいしん)」です。
随臣とは「左大臣」と「右大臣」の総称のことで、向かって右(男雛・女雛から見た左)に老人の「左大臣」、向かって左(男雛・女雛から見た右)に若者の「右大臣」を置きます。
持たせる道具は右手に「矢」、左手に「弓」で、背中には矢を入れた「胡簶(やなぐい)」を背負わせます。
五段目(仕丁)
「仕丁(じちょう)」とは貴族・宮中に仕える雑用係のことで、庶民のような存在です。
泣き・笑い・怒りの3つの表情で作られていて「三人上戸(さんにんじょうご)」とも呼ばれています。並べる順は、向かって左から「怒り」「泣き」「笑い」で、手に「熊手」「靴」「ほうき」を持たせます。
「仕丁」の両脇は「桜」と「橘(たちばな)」で、「左近の桜、右近の橘」という言葉どおり、向かって右側に「桜」、左側に「橘」を飾ります。(※この場合も随臣と同様、男雛・女雛から見ての右・左で考えます)
■豆知識②『ひな人形の縁起話』
ひなまつりを過ぎた後も「ひな人形」を飾ると女の子が嫁に行けなくなるという言い伝えがありますが、これは、ひなまつりの起源が「流し雛」であることが関係しています。
かつてのひなまつりは、女の子の厄を人形に移して川に流す行事であったため、ひな人形を飾り続けることは女の子に厄を残すことと同じであり、そこから嫁に行けなくなる(=婚期が遅れる)という言い伝えが生まれたと考えられています。
2023年3月のカレンダー【付録】
最後に、付録として2023年度3月の行事・祝日・二十四節気・記念日が分かるカレンダーを載せておきました。日々の生活にお役立てください。
【国民の祝日】
●春分の日【3/21】・・自然をたたえ、生物をいつくしむための日。「二十四節気」の「春分」にあたる。
【二十四節気】
●啓蟄(けいちつ)【3/6】・・旧暦2月の節気。「蟄」は虫などが土の中で隠れているという意味で、大地があたたまって目覚めた虫たちが、穴を啓(ひら)いて地上へ出てくる様子からその名がついた。
●春分(しゅんぶん)【3/21】・・旧暦2月の中気で、彼岸の中日(なかび)にあたる。昼夜の長さがほぼ同じになり、この日以降、次第に日が伸びていく。
【五節句・雑節】
●上巳(じょうし)【3/3】・・日本の五節句のひとつで、旧暦3月初めの巳の日。現在では3/3を指す。桃の花が咲く季節であることから、別名「桃の節句」と呼ばれている。
●春彼岸(はるひがん)【3/18~24】・・春分をはさんだ前後3日間。先祖供養の習慣があり、春の花の牡丹にちなんで「ぼたもち(牡丹餅)」をお供えする。「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通り、この「彼岸」を過ぎるとぽかぽかと陽気な気候になって過ごしやすくなる。
【記念日】
●ミツバチの日【3/8】・・「み(3)つばち(8)」の語呂合わせから。全日本はちみつ協同組合と日本養蜂はちみつ協会が制定。
●砂糖の日【3/10】・・「さ(3)とう(10)」の語呂合わせから。砂糖の優れた栄養価を見直す日。
●サンドイッチデー【3/13】・・「1」が「3」に挟まれていることから。
●ホワイトデー【3/14】・・菓子業界が、マシュマロやクッキー・キャンディをバレンタインデーのお返しの品として提唱したことがきっかけとされる。1980年に全国飴菓子工業協同組合が「ホワイトデー」と命名した。
●電車の日【3/20】・・1974年3月20日に、電車の生産数が年間100万台を突破し、同日が国産電車の生産から10年目の節目にあたることを記念して、社団法人・日本事務機械工業会(現:一般社団法人ビジネス機械・情報システム産業協会)が制定。
●国連水の日【3/22】・・国際連合が制定した記念日。水の大切さを見直す日。
●さくらの日【3/27】・・「さくら(3×9=27)」の語呂合わせと七十二候の「桜始開(さくらはじめてひらく)」にちなんで、日本さくらの会が制定。
●エッフェル塔の日【3/31】・・1889年3月31日に、エッフェル塔の落成式が行われたことに由来する。エッフェル塔は、パリ万博に合わせて建設された鉄塔で、設計者はフランス人技師のギュスターヴ・エッフェル。
【その他】
●旧暦3月『弥生(やよい)』・・「いや(弥)」には「いよいよ、ますます」という意味、「おい(生)」には「草木が芽吹く(生い茂る)」という意味があり、この時期に「草木がだんだん(=弥)と芽吹いてくる(=生)」ことから「弥生(やよい)」となった。
●3月の英名『March』・・・・ローマ神話の軍神「マルス(Mars)」が語源。ロムルス暦における「3月」は、冬に中断された軍事作戦を再開する時期で、戦いの勝利を願って、戦争の神である「マルス」を月名に取り入れた。
●時候の花・・沈丁花(じんちょうげ)、杏(あんず) など
●旬の菜と魚・・わさび、新玉ねぎ、菜の花、ふき、メバル、サヨリ など
●3月の童謡・唱歌
『うれしいひなまつり』(作詞:サトウハチロー/作曲:河村光陽)
『どこかで春が』(作詞:百田宗治/作曲:草川信)
『春よ来い』(作詞:相馬御風/作曲:弘田龍太郎)
おわりに
いかがでしたでしょうか。
「ひな御膳」としていただく色彩豊かな食べ物や、典雅で奥ゆかしい「ひな飾り」を見ていると、何だか身も心も晴ればれとしてきますね。
現在では、核家族化や住宅事情・環境の変化などもあって、コンパクトなひな壇を飾るのが主流となっていますが、かつては家の権威やステータスの象徴として豪華なフルセットのひな壇を飾っていたそうです。
さて、3月には、そんな「ひなまつり」も含めて春らしいイベントが目白押し。下旬には早いところで桜が見頃になります。
コロナや冬の寒さで気持ちが沈みがちな日々が続いたので、春を彩るおめでたいイベントで、鬱屈した気分をさっと吹き飛ばしたいものですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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