
こんにちは、
りんとちゃーです。
気温が下がって過ごしやすくなり、甘くて美味しい食べ物がたくさんお店に並ぶ食欲の秋の10月。
この時期には、一年で最も月が美しくなる「中秋の名月」にお月さまに団子やススキを供えて秋の収穫に感謝する「十五夜(じゅうごや)」行事の他、五穀豊穣を祝う伊勢神宮の感謝祭の「神嘗祭(かんなめさい)」や九州地方の秋祭りの「くんち」、20日に行われる関東の「えびす講」など、様々な行事が催されます。
記事では、以下のことをまとめています。
■十五夜(中秋の名月)とお供え物の意味
■神嘗祭(かんなめさい)の由来・歴史
■長崎くんちと博多おくんち
■えびす講とその起源
■2024年10月のカレンダー【付録】
秋にまつわる行事を学んで、知識の初穂を実らせましょう。
十五夜【10/6】
旧暦8/15の「中秋(ちゅうしゅう)の名月」の日に、お月さまに団子やススキを供えて秋の収穫に感謝する行事のことを「十五夜(じゅうごや)」と言います。
※2025年の中秋の名月は10月6日(月)
「十五夜」は平安時代に中国の唐から伝わった習わしで、当初は貴族が風雅に月を愛でるというものでした(=月見の宴)。
それが次第に作物の収穫祭と結びついて、庶民が実りの象徴として月を観賞するようになり、さらにお供え物をして感謝や祈りを捧げるように変化していったと言われています。
中秋の名月と仲秋の名月
「中秋の名月」は「仲秋の名月」と表すこともあり、両者には次のような違いがあります。
中秋の名月
「中秋」は、旧暦における秋の期間(7月~9月まで)のちょうど真ん中という意味で、「中秋の名月」は『秋の真ん中(旧暦8/15)の名月』のことを指します。
仲秋の名月
旧暦における秋の3ヶ月間(7月~9月)は、三兄弟に見立てて次のように呼び分けがされています。
■孟秋(もうしゅう)旧暦7月
■仲秋(ちゅうしゅう)旧暦8月
■季秋(きしゅう)旧暦9月
※孟・仲・季といった頭文字には意味があり、それぞれ「はじめ=孟」「2番目=仲」「最後=季」を表す。
つまり「仲秋」とは旧暦の8月のことで、「仲秋の名月」は『旧暦8月の名月』を指すことになります。
▶▶一般的に「十五夜」は、前者の「中秋の名月」の名で呼ぶことが多いですが、後者の「仲秋の名月」の名で呼んでも意味的に間違いではありません。
お供え物
ススキ
中秋の名月に「ススキ」を飾る理由として有力な説は次の2つです。
①茎の内部が空洞になっている「ススキ」は、古くから神さまの「依り代(よりしろ=精霊・神霊が依り憑くもの)」だと考えらていて、悪霊や災いから収穫物を守るために、お月見の際に一緒に供えられた。
②豊穣の象徴である満月が出る十五夜(中秋の名月)に、収穫への感謝を込めて米や豆・芋などを供える風習があり、その際に、まだ実っていない稲穂の代用として、見た目のよく似た「ススキ」が供えられた。
月見団子
「満月」に見立てた丸い形の「月見団子」には、秋の収穫への感謝と健康祈願の意味が込められていて、供えた後にそれを食べることで健康と幸福が得られると信じられていました。
お団子の数は「十五夜」にちなんで15個供えるのが一般的で、地域によっては、その年に見られる満月の回数の12個(うるう年の時は13個)を供えることもあります。
里芋
「中秋の名月」は、別名で「芋名月」と呼ばれるように、ちょうど里芋の収穫期にあたります。そのため、近畿や中国地方などの一部地域では、お月見の日に収穫物の「里芋」を供えるのが慣習になっています。

サトイモ型の
お団子を供える
地域もあるよ。
その他のお月見
お月見と言えば中秋の名月の「十五夜」が有名ですが、他にも「十三夜(じゅうさんや)」や「十日夜(とおかんや)」と呼ばれるお月見が存在します。
十三夜(じゅうさんや)
「十三夜(じゅうさんや)」は、十五夜の後にやってくる旧暦9月15日のお月見行事で、13個の団子と一緒に栗や大豆などの秋の農作物をお供えすることから、別名で「栗名月」「豆名月」と呼ばれています。
※2024年の「十三夜」は新暦の10月15日(火)
一般的にお月見は「十三夜」と「十五夜」の両方を行うのが好ましく、どちらか片方だけを行う「片見月(かたみづき)」は縁起が悪いとされていました。
十日夜(とおかんや)
「十日夜(とおかんや)」は、東日本を中心に旧暦10/10の収穫祭の日に催されている行事で、西日本では「亥の子(※1)」の名で親しまれています。
(※1)亥の子(いのこ)・・亥の月(旧暦10月)の最初の亥の日・亥の時間に行う収穫祭のこと。
この日になると、子どもたちが稲を束ねた「わら鉄砲」で地面を叩いてモグラを追い払い、田んぼを見守ってくれる「かかしあげ」に米や餅をお供えします。
■豆知識①『お月見泥棒』
お月見の変わった風習に「お月見泥棒」というものがあります。
「お月見泥棒」は「お月見の夜に子どもたちがお供え物の団子をとっても叱ってはいけない」というしきたりで、「神さまに捧げた物は皆で分かち合おう」という古くからの考え方がもとになっています。
月うさぎ伝説
お月見と言えば、月のうさぎが餅をつく場面をイメージしますが、その大もとの起源はインドに古くから伝わる「月うさぎ伝説」にあります。
ここでは、いくつかある「月うさぎ伝説」の中で、一般的に知られているストーリーを紹介したいと思います。
■あらすじ
むかしむかし、あるところに「うさぎ」と「きつね」と「さる」の3匹の動物がおりました。
ある日、彼らはこんなことを話し合いました。
「おいらたちがけものの姿をしているのはなんでだ?」
「前世でなにか悪いことをしたからじゃないの?」
「なら、よいことをすれば報われるのかなぁ。」
その会話をこっそり聞いていた月の神さまの「帝釈天(たいしゃくてん)」は、3匹に何か良いことをさせてあげようと考え、老人の姿になって彼らの前にあらわれます。
老人は言いました。
「腹が減って動けないわい。何か食べ物をめぐんでくれんかのう?」
それを聞いた3匹は「これは良いことができる絶好のチャンスだ!」と喜び、老人のために食べ物を探しにいきます。
しばらくして、さるは「木の実」を、きつねは「魚」をとってきました。しかし残念ながら、うさぎは何もとってくることができませんでした。
そこでうさぎは、
「わたしには食べ物をとってくる力がないようです。どうか代わりに私を食べてください。」
と言って、燃え盛る火の中に飛び込み、自らの身体を老人に捧げてしまいます。
そのことを大変哀れに思った老人(帝釈天)は、うさぎの姿を月の中によみがえらせて、皆のお手本として永遠に残すようにしたのです。
■豆知識②『うさぎが餅つきをしているのはなぜ?』
うさぎが餅つきをしている理由には、「老人のために餅をついている」とか、「うさぎが食べものに困らないようにするため」とか、「米の収穫に感謝するため」とか諸説ありますが、正確なところは分かっていません。
神嘗祭【10/17】
「神嘗祭(かんなめさい)」は、伊勢神宮で毎年10月17日に執り行われる宮中行事で、その年の最初に収穫した稲(=初穂・新穀)をアマテラスオオミカミに供え、五穀豊穣をお祝いします。
奈良時代の721年に始まったとされ、明治時代までは太陽太陰暦(旧暦)の9月17日に行われていました。
初穂を供えるのは、日本神話においてアマテラスが天上界(高天原)で米を好んで食べていたからで、食べ物で神様をもてなす(=嘗)ことにちなんで「神嘗祭」の字が当てられています。
類似する祭事にもう一つ「新嘗祭(にいなめさい)」がありますが、こちらは「神嘗祭」の約1ヶ月後の11月23日に、天神地祇(てんじんちぎ)すべての神々に天皇陛下が収穫への感謝を示すための儀式で、新穀(初穂)を供えるとともに天皇陛下自らがそれを召し上がります。
「新嘗祭」の始まりは飛鳥時代で、かつては国家行事として行われいました。それが戦後に国民の祝日の「勤労感謝の日」へと変わり、現代では各地の神社にそのなごりを残すのみとなっています。
※2024年の神嘗祭は10/17(木)、 新嘗祭は11/23(土)。
くんち【10/7~9、23・24】
「くんち」とは、福岡・佐賀・長崎などの九州北部で行われている有名な秋祭りで、漢字では「宮日」「供日」と表記します。
もともとは9月9日の「重陽の節句」に行われていた行事で、「9日」の九州の方言にちなんで「くんち」と呼ばれています。
「日本三大くんち」は、「長崎くんち(長崎県長崎市)」「唐津くんち(佐賀県唐津市)」「博多おくんち(福岡県福岡市)」の3つ。このうち「長崎くんち」と「博多おくんち」が10月に開催されます。
長崎くんち
●祭礼日:毎年10/7~10/9
●会場:諏訪(すわ)神社、八坂神社、中央公園など
●起源:1634年、諏訪神社の秋季大祭で2人の遊女(高尾と音羽)が舞を奉納したのがはじまり。
▶▶見所は、各町が踊りを奉納する「奉納おどり」で、鯨の潮吹き・御朱印船・阿蘭陀万歳など、南蛮文化の風合いを感じるダイナミックな演し物を見ることができる。
博多おくんち
●祭礼日:毎年10/23、24
●会場:櫛田(くしだ)神社、博多区一帯
●起源:博多市博多区にある櫛田神社の秋季大祭で行われていた新嘗祭の日付が変更されてはじまったとされる。
▶▶24日に行われる「御神幸(ごしんこう)行列」が見所で、牛車をひく神輿(みこし)や稚児(ちご)行列、ミス博多が乗るオープンカーなどのパレードを見ることができる。
えびす講【10/20】
「えびす講」は、えびす様(※1)を祀って商売繁盛を祈願する行事で、毎年1/10と10/20に催されます。
呼び名は地域によって異なり、たとえば10/20に行われる関東では「二十日えびす」と呼ばれ、1/10に催される関西では「十日えびす」の名で親しまれています。
(※1)えびす(恵比寿)・・七福神の一柱。右手に釣りざお、左手に鯛を抱く商売繁盛の神様。豊穣・豊漁の神様でもあり、農村や漁村で古くから篤く信仰されてきた。漢字で「蛭」「戎」と表記することも。
「十日えびす」では、えびす様と縁の深い西宮神社や今宮戎(いまみやえびす)神社に参拝し、商売繁盛の縁起物である笹の飾り物を買い求めます。
「えびす講」の起源は旧暦10月の神無月(かんなづき)にあり、全国の神様が出雲大社(いずもたいしゃ)に集まる中で、一人だけ居残った「えびす様」を慰めるためにこの行事が始まったと言われています。
10月のカレンダー【付録】
付録として2025年度10月(晩秋・旧暦9月【長月】)の行事・祝日・二十四節気・記念日が分かるカレンダーを載せておきました。日々の生活にお役立てください。
【国民の祝日】
●スポーツの日【10/13】・・毎年10月の第2月曜日にあたる国民の祝日。1964年の東京オリンピック開催を記念して「国民がスポーツを楽しみ、健康な心身を培う日」として「体育の日」が制定。その後、2000年の法改正(=ハッピマンデー制度)で10月の第2月曜日に移動し、2020年に「スポーツの日」に名前が改められた。
【二十四節気】
●寒露(かんろ)【10/8】・・朝晩の冷え込みが厳しく感じられる一方で、空気の澄んだ秋晴れが続き、過ごしやすくなる時期。夜の時間が長くなり、美しく輝く月を見ることができる。
●霜降(そうこう)【10/23】・・朝晩の冷え込みがいっそう厳しくなり、北国や山里で霜が降り始める頃。暦の上では最後の秋の節気にあたり、山々では紅葉が見られる。
【行事・記念日】
●日本酒の日【10/1】・・日本の國酒である日本酒を後世に伝えるとともに、いっそうのご愛顧とご理解をという願いを込めて、日本酒造組合中央会が1978年に制定。
●国際コーヒーの日【10/1】・・世界一のコーヒー生産国であるブラジルのコーヒー栽培の新年度が10/1であることにちなんで、国際コーヒー機関が2014年に制定。
●いわしの日【10/4】・・「いわ(10)し(4)」の語呂にちなんで、大阪府多獲性魚有効利用研究会(大阪おさなか健康食品協議会)が1985年に制定。安くて栄養豊富ないわしをPRするとともに、水産資源の有効利用について理解を深めてもらうことが主な目的。
●レモンの日【10/5】・・1938年10月5日に詩人の高村光太郎の妻・智恵子が死去し、彼女の最期に病床で高村が綴った詩集「レモン哀歌」の名にちなんで、命日の10/5がレモンの日となった。
●まぐろの日【10/10】・・聖武天皇のお供として明石地方を旅した歌人の山部赤人(やまのべのあかひと)が、726年10月10日にまぐろ漁で栄えたこの地を讃える歌を詠んだことにちなむ。
●銭湯の日【10/10】・・せんとう(1010)の語呂合わせと1964年の東京五輪開幕にちなんで、東京都公衆浴場生活衛生同業組合が制定。スポーツ後の入浴による健康増進を目的とする。
●さつまいもの日【10/13】・・さつまいものことを、「九里より(四里)うまい十三里(=九+四)」と呼んでいたことに由来して、川越いも友の会が10/13を「さつまいもの日」に制定。
●きのこの日【10/15】・・きのこ類の消費拡大を目指し、日本特用林産振興会が、きのこの需要が高まる10月のなか日(=10月15日)を「きのこの日」に制定した。
●冷凍食品の日【10/18】・・冷凍(れいとう)の「10(とう)」と、世界共通の冷凍食品の管理温度「-18℃」にちなんで、日本冷凍食品協会が1986年に制定。
●灯りの日【10/21】 ・・1879年のこの日にアメリカのトーマス・エジソンが世界で実用的な電球を開発したことを記念して、「あかりの日」委員会が1981年に制定。
●ハロウィン【10/31】・・ヨーロッパを発祥とする祭りで、もともとは秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いがあった。現在では、様々なキャラクターにコスプレをして街に繰り出す、仮装イベントとして親しまれている。
【その他】
●旧暦10月『神無月(かんなづき)』・・旧暦の10月は、全国の八百万(やおろず)の神さまが出雲大社に集まる時期で、出ていってしまった国では神さまがいなくなるので「神無月(かんなづき)」と呼ばれている。
●10月の英名『October』・・「ラテン語の数の接頭辞(=数詞)」からとったもので、「8」を意味する「octo」が語源。
●時候の花・・菊、秋海棠(しゅうかいどう)、芙蓉(ふよう) など
●旬の菜と魚・・里芋、しめじ、松茸、柿、八角、イシモチ、マコガレイ など
●10月の童謡・唱歌
『赤とんぼ』(作詞:三木露風/作曲:山田耕筰)
『虫のこえ』(文部省唱歌)
『夕焼け小焼け』(作詞:中村雨紅/作曲:草川信)
『証城寺の狸囃子』(作詞:野口雨情/作曲:中山晋平)
おわりに
いかがでしたでしょうか。
古くから日本人は、四季が織りなす自然に触れながら、暦を用いて季節に合わせた生活を営んできました。
今回ご紹介した中秋の名月は、月にお供え物をして秋の収穫に感謝する由緒ある行事。十五夜の夜には、美しい月を愛でながら、秋の到来をその身に感じてみたいものですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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