【2022冬ドラマ】『ミステリと言う勿れ』名言集|セリフで振り返る名シーン

机に広げられた分厚い本 ドラマ名言・名セリフ集

 こんにちは、

 りんとちゃーです。

田村由美の同名漫画を原作とする、新感覚ミステリドラマ「ミステリと言う勿れ」。

物語では、人気俳優の菅田将暉(すだまさき)が演じるアフロヘアーの風変わりな大学生・久能整(くのうととのう)が、卓越した観察眼と、既成概念にとらわれない推理力を武器に淡々と持論を展開し、事件の謎だけでなく悩める人の心も解きほぐしていきます。

記事では、そんなドラマの名場面・名シーンを思い出せるように、以下のことをまとめました。

ドラマ情報(基本情報と登場人物・キャスト)

各話ごとの名言・名セリフと気になる用語の解説

それでは、ドラマの名言・名セリフとともに内容を振り返ってみましょう。




ドラマ情報

基本情報

『ミステリと言う勿れ』

――関西テレビ  月曜夜9:00  【2022年1月10日~3月28日まで放送】

公式サイト
https://www.fujitv.co.jp/mystery/
原作:『ミステリと言う勿れ/田村由美』(小学館『月刊フラワーズ』連載中)
コミック「ミステリと言う勿れ①/田村由美』
【Amazon.co.jp】ミステリと言う勿れ(1) (フラワーコミックスα)
脚本:相沢友子
音楽:Ken Arai
主題歌:King Gnu 『カメレオン』(ソニー・ミュージックレーベルズ)
▶公式MV【https://youtu.be/BOrdMrh4uKg
プロデュース:熊谷理恵、草ヶ谷大輔
演出:相沢秀幸、品田俊介、松山博昭

視聴率
・第1話(13.6%)・第7話(12.3%)
・第2話(12.7%)・第8話(10.6%)
・第3話(13.2%)・第9話(11.6%)
・第4話(13.3%)・第10話(12.0%)
・第5話(10.0%)・第11話(11.1%)
・第6話(10.2%)・最終話(11.2%)
――ビデオリサーチ調べ

登場人物(キャスト)

久能 整【くのう ととのう】(菅田 将暉)・・天然パーマのアフロヘアーが特徴の風変わりな大学生。趣味はカレー作り。卓越した観察眼と既成概念にとらわれない推理で持論をあざやかに展開し、1話で事件を見事解決。その後、さまざまな事件に巻き込まれる。
風呂光 聖子【ふろみつ せいこ】(伊藤 沙莉)・・大隣(おおどなり)警察署の新人刑事。男社会の警察組織の中で、女だからと甘く見られたりバカにされることに悩み、一時は辞職も考えたが、整と出会いをきっかけに自身の存在意義を見出だす。2話では、今までの自分を変えるために自らの足で聞き込み調査を行い、連続殺人事件とバスジャック事件の関連性を見つけ出す。整に好意を持ち、彼と親しくするライカに嫉妬心を抱く。
池本 優人【いけもと ゆうと】(尾上 松也)・・大隣警察署・巡査。お調子者でひょうきんな性格。妊娠中でナーバスになっている妻との関係に思い悩んでいたところ、整が的確な助言をしてくれたことで夫婦生活は円満に。その後は何かに付けて整にアドバイスを求めるようになる。
青砥 成昭【あおと なりあき】(筒井 道隆)・・大隣警察署・警部。もとは警視庁捜査一課のポストにいたが、無実の人間を逮捕するえん罪事件を起こし飛ばされてしまう。整の「真実は一つではなく、人の数だけ存在する」という言葉に感化され、もう一度新たな視点で過去の事件と向き合う。

薮 鑑造【やぶ かんぞう】(遠藤 憲一)・・大隣警察署・警部補。署内では「仕事の鬼」「刑事の鑑(かがみ)」と呼ばれる。仕事優先の生き方をし、家庭のことはほとんど顧みなかった。1話の事件で、刑事の勘から「犯人は整に違いない」と断定。執拗に彼を追求した。

犬堂 我路【いぬどう がろ】(永山 瑛太)・・金髪直毛の美青年。妹の愛珠(あんじゅ)を殺害した犯人を見つけ出すため、いとこのハヤ・オトヤとともにバスジャック事件(2-3話)を企てる。事件後、整と再会する約束をして行方をくらます。

犬堂 愛珠【いぬどう あんじゅ】(白石 麻衣)・・犬堂家の長女で、連続殺人事件最初の被害者。寄木細工を集めるのが趣味。漂流郵便局に「ジュートに頼る」という謎のメッセージを書いた遺書を残す。(2-3話・最終話)

三船 三千夫【みふね みちお】(柄本 佑)・・連続爆弾事件(4話)の犯人。犯行途中、不運にも車にはねられ記憶喪失に。小さいときに母親に捨てられ、小学校でいじめを受けたつらい過去を持つ。
牛田 悟郎【うしだ ごろう】(小日向 文世)・・整と同じ病室に入院していた患者で、定年退職した元刑事。刑事時代に担当したいくつかの殺人事件の話を整にし、「その真相は?」と問題を出す。(5話)

羽喰 玄斗【はぐい げんと】(千原 ジュニア)・・平成の切り裂きジャックと呼ばれた連続殺人魔。3年間で18人もの売春婦を殺害。息子の辻浩増に、完全な「十」(=土の記号で万物のシンボル)を意味する秘密の名前『十斗(じゅうと)』を与える。(5話・11話・最終話)

ライカ(門脇 麦)・・大隣総合病院の入院患者。謎の多い女性で、牛田に渡した自省録を利用して、整と数字の暗号でやり取りする。ライカという存在は、乖離性人格障害を持つ『千夜子』の別人格であると10話で明かされる。(5-10話)

梅津 真波【うめづ まなみ】(阿南 敦子)・・大隣総合病院にある温室の管理者。病院内で出会った老婆・宗像冴子【むなかたさえこ】(冨田恵子)と親しくなるが、彼女が亡くなった際に、遺品であるバックを無断で持ち帰ってしまい、そのことに後ろめたさを感じていた。(6話)
下戸 陸太【おりと ろくた】(岡山 天音)・・大隣総合病院に通院している気の荒い青年。赤いものを見ると頭が痛くなる持病を持つ。耳の真珠のピアスに彫られた「6」と「9」は、名前の「ろく(6)た」と、生まれ変わったらなりたい生き物「クジラ(9)」にちなんだもの。兄が風邪をこじらせて亡くなり、そのことがきっかけで母親から虐待を受ける。(6-7話)
井原 香音人【いはら かねと】(早乙女 太一)・・下戸の友人で、いつも猫を抱いている。幼くして父を失い、一人残された母親から虐待を受ける。10歳の頃に母親を火事で亡くし、14歳でぼや火災を起こし逮捕、前科者に。連続放火殺人の犯人だと警察に疑われている。名前の「香音人」は、母親の趣味がお香であったことにちなんだもの。(6-7話)

美吉 喜和【みよし きわ】(水川 あさみ)・・天達春夫のパートナー。心理カウンセラーで、診療内科に勤める。5年前に他界し、整とは幼少期に面識がある。(7-9話)
天達 春夫【あまたつ はるお】(鈴木 浩介)・・整が通う大学の准教授で、専門は心理学。橘高・蔦とは高校時代の同級生。整が尊敬する先生。(6-9話)
橘高 勝【きつたか まさる】(佐々木 蔵之介)・・市役所の市民課に勤務。天達・蔦とは高校時代の同級生。潔癖症な性格でマイボトルやマイ箸を持ち歩く。(8-9話)
蔦 薫平【つた くんぺい】(池内 万作)・・ミステリー会の会場となった山荘のオーナー。天達・橘高とは高校時代の同級生。(8-9話)
沙也加【さやか】(志田 未来)・・整とライカが初詣の帰りに寄った焼肉店の店員。強盗殺人犯が父親のふりをして店にいることを、暗号を使って整たちに知らせた。(10話)
備前島 操【びぜんしま みさお】(船越 英一郎)・・かつて捜査本部で羽喰玄斗を追っていた横浜港中央署の警部。新たに発生した連続通り魔殺人事件の現場指揮をとる。一人で無茶な行動をとる部下に対して「お客様体質に気をつけろ」と口を酸っぱくして説く。(11話・最終話)

猫田 十朱【ねこた とあけ】(松本 若菜)・・備前島の直属の部下。風呂光とは対照的に、気が強く男勝りな性格。辻浩増(羽喰十斗)の標的となって重傷を負うが、風呂光が助けを呼んだことで一命をとりとめる。(11話・最終話)
辻 浩増【つじ ひろまさ】(北村 匠海)・・寄木細工ミュージアムの学芸員。同僚からは「コウマ」の愛称で呼ばれる。その正体は羽喰玄斗の息子・羽喰十斗(はぐいじゅうと)で、親しい関係だった愛珠にカウンセリングの先生(鳴子巽)を紹介した。(11話・最終話)

月岡 桂【つきおか かつら】(森岡 龍)・・寄木細工作家。生前の愛珠に寄木細工を教え、好意を抱く。(最終話)

美樹谷 紘子【みきたに ひろこ】(関 めぐみ)・・父親に会いに行くために乗った電車の席で整と隣同士になった女性。手紙のイラストの秘密を整が解き、実の母親の真意を知る。育ての母親は美樹谷サキ(高畑淳子)。(最終話)




名言・名セリフ一覧

久能整の好物のカレーライス

第1話(変わり者の大学生が殺人容疑、真実は人の数だけある)

「真実は一つなんかじゃないですよ。真実は人の数だけあるんです――。人は主観でしか物を見れない。自分が正しいとしか言えない。真実とかあやふやなことにとらわれているから、えん罪事件が起きるんじゃないですか?」

自身が起こしたえん罪事件を振り返り、「当時裁けなかった犯人をいつか捕まえてやる」と語気を強める青砥(筒井道隆)。それに対して言った整(菅田将暉)のセリフ。

▶▶人は主観的な生き物であり、自分の主観の世界から抜け出すことはできません。いくら相手を理解しようとしても、相手そのものになることはできず、まったく同じ境遇に立たない限り、その気持ちを全て理解することはできません。主観にとらわれない第三者的視点に立てるのは、神のような存在だけでしょう。

 

物事は一つの側面から見ただけでは何も分かりません。一部の情報だけで全てを理解した気になることで偏見や先入観が生まれ、結果、取り返しのつかない悲劇やえん罪が起きてしまいます。整が発する言葉には、既成概念にとらわれた私たちに、新たな気付きや視点を与えてくれる力があり、そんな彼の不思議な話術に魅了されて、作中の登場人物たちは知らず知らずのうちに心が解きほぐされていくようです。

第2話(奇妙なバスジャック!その目的は・・)

「人を殺したらいけないってことはないですよ。別に法律で決まっていることでもないですし。罰金はありますけど、人を殺しちゃいけないっていう法律はないです。」

「バスの運転手は殺さないで」と訴える乗客のめぐみ(佐津川愛美)に、「どうして人を殺したらいけないんだ?」とナイフを突き立てすごむバスジャック犯の犬堂オトヤ(阿部亮平)。そんな彼に言った整のセリフ。

▶▶法律とは、国家の秩序を維持するために便宜上作られたものであり、必ずしもそれが絶対的な正しさや正義であるとは限りません。たとえば、日本で禁止されている大麻や安楽死は海外では合法だったりするし、逆に、日本で認められている死刑制度は海外で禁じられていたりします。また、時代背景というパラメーターも人々の価値観に大きな影響を与えていて、戦時中は殺人こそが正義とされ、むしろ奨励されたりもしていました。

 

そんなふうに、物事の良し悪し、正義・悪は時とともに変化していくもので、絶対的なものは存在しないこと、また、それぞれの境界は非常にあいまいで、明確に線引きすることはできないこと、そんなことを考えさせられました。

第3話(遂にバスジャック解決編!犯人は誰だ?哀しき復讐)

「制服を着ている人は一人の人間として認識しづらいから、盲点になりがちなんです。」

事件後、連続殺人事件の真相になぜもっと早く気付けなかったんだろうと悔いる犬堂我路(永山瑛太)。そんな彼に向けて言った整のセリフ。

▶▶1話の事件でもそうでしたが、人は職業や外見、人となりで先入観を抱いてしまい、それによって思わぬ誤解を引き起こすことがあります。今回の連続殺人事件も、その概要から猟奇的な殺人犯やストーリーを想像していましたが、実際は、幼少期の行動の癖が大人になっても抜けない人間が、狂気とともに起こした悲劇の物語にすぎませんでした。




第4話(記憶喪失の爆弾魔、爆弾はどこ?爆発を食い止めろ)

――あなたは爆破したいのと同時に、爆破したくなかった。先生との、お母さんとの唯一の楽しい記憶をずっと大切に守っていたかった。あなたは本当はお母さんが大好きなんだと、僕は思います。」

警察に捕まり、別れ際に自分の名前を打ち明ける爆弾犯・三船(柄本佑)。そんな彼に言った整のセリフ。

▶▶犯人の送った暗号についての『なぜ』がずっと心にひかかっていた整。暗号が解かれれば、爆破は食い止められる――。つまり、犯人にとって爆破したい最悪の場所というのは、同時に残しておきたい大切な場所でもあり、暗号は、犯人の心の中に存在する相反した二つの感情を象徴するものでもあったのです。

 

人の心理ほど複雑なものはありません。好きなのに嫌い、憎らしいけど愛情を感じるなど、矛盾する感情が共存できてしまうのが心というものです。これまでの話では、偏見にとらわれることの危険性や、物事に複数の視点があることが強調されていましたが、今回の話では、相反する感情が共存しうる「心情の両面性(アンビバレンス)」が示されていたように思えました。

第5話(奇妙な入院生活!22年前の未解決事件が動き出す)

「正気に返って自己を取り戻せ。目を醒まして、君を悩ましていたのは夢であったのに気づき、夢の中のものを見ていたように、現実のものをながめよ。」

整と同じ病室に入院していた患者の牛田(小日向文世)が、しおりを挟んで最期に残した『自省録』の一節。

▶▶相棒(霜鳥信次)の罪に気付きながら、それをずっと隠し続けていた牛田。事件を告発するかどうか迷っていた彼に、「すべてを明かそう」と決意を抱かせたのは、見舞いに来た霜鳥の「治療費を全額払ってあげる」という言葉でした。

 

他人を傷つけるようなことは決して言わない、優しい人間だった霜鳥。自分のことを誰よりも知っていたはずの彼が、自身の最も嫌いとする言葉を臆面なく発したこと――、それが牛田にとってはつらく悲しい事実だったのでしょう。物語の最後で提示された『自省録』の一節は、そんな牛田の思いを象徴しているように感じました。

第6話(放火殺人に潜む闇、子供を救う炎の天使!謎の女性の目的は?)

「子どもがそういう態度をとる場合、たいてい親のほうが先にひどいことをしています。子どもがそうなるのには理由があります。家族や身内には厳しくても、他人には優しい人っていますから――。」

病院で親しくなった老婆の宗像冴子(冨田恵子)が亡くなった際に、彼女の娘が遺体や遺品を引き取りに来なかったため、「なんて冷酷な人間なんだ」と怒りをあらわにする梅津(阿南敦子)。そんな彼女に言った整のセリフ。

▶▶人は表面的な部分を見るだけでは本質を理解できません。梅津に対しては優しく接していたが、娘には愛情を注げなかった老婆・宗像冴子のように、家族に厳しいけど他人には優しい、いわゆる内弁慶という人が世の中には多くいます。もちろんその逆の外弁慶もしかりです。

 

娘が親の死後に冷淡で親不孝な行動をとったのも、過去に親からひどいことをされたという娘なりの理由があったのかも知れません。

 

ちなみに、娘に愛情をかけれなかった今回の老婆のエピソードは、次の物語の、親による虐待とその救世主が起こす連続放火事件へと繋がっていきます。こういった物語の伏線的要素もこのドラマの醍醐味だと思います。




第7話(炎の天使編完結!炎の天使の正体とは・・驚愕の事実が明らかに)

「それをずっと抱えていくんですか、子どもたちにもそうさせるんですか?――それもまた虐待です。」

過去の放火事件が原因で赤いものを見れなくなった下戸陸太(岡山天音)。「それでも、炎の天使によって自分は救われたんだ」と主張する彼に向けて言った整のセリフ。

▶▶「放火によって両親を殺すことを選んだ子どもたちは、きっと幸せになったはずだ」と語気を強める陸太。しかし実際の子どもたちは、親の不在によって里親や友だちからいじめを受けたり、自分たちが放火を許可した罪悪感に苦しんだりと、必ずしも『幸せ』とは言えるものではありませんでした。

 

結局、彼らがした行為は、虐待する親を裁き、自分たちが子どもたちを救済したという傲慢な考え方・自己満足にすぎなかったのでしょう。たとえ虐待をするようなひどい親であっても、子どもたちにとってはかけがえのない存在です。彼らにとって、本当に必要な救いとは何か――。そんなことを考えさせられる内容だったと思います。

第8話(ミステリーナイト開幕!殺すのか?殺されるのか?)

「自分に苦手なものがあると認識している人は、生徒にも苦手なものがあると理解できる。自分ができることは人ができると信じている教師は、多くを取りこぼすことになる。」

部活・サークルに所属せず、接客経験もない整に対して、「教師に向いてないんじゃないか?」と不安げに口にする蔦(池内万作)。そんな彼に言った天達(鈴木浩介)のセリフ。

▶▶病気や障害を経験することで相手の心情が分かったり、似たコンプレックスを持つ人に共感を抱いたりと、人は、自身の弱み・欠点を認識することではじめて同じ立場の人間を思いやることができます。

 

反対に、何の弱みも持たず、逆境も経験せずに順風な人生を送ってきた人は、他人の痛みが分からない傲慢な人間になる可能性があります。自分の弱点は、時に大きな武器となる――。整が敬愛する心理学の先生らしい、深い洞察のある言葉だと思いました。

第9話(ミステリーナイト真相編!恩人を殺したのは誰だ)

「自分のミスを知られたくなかったから――。悪意よりも自分のミスのほうが話せない人もいます。」

喜和(水川あさみ)の居場所をストーカーに教えた事実を隠そうとした橘高(佐々木蔵之介)を強く非難する蔦。そんな蔦から橘高をかばうようにして言った整のセリフ。

▶▶ストーカーに喜和の居場所を教えてしまったことを後悔していた橘高。そんな彼が、自分のミスを誰にも打ち明けれないことに悩み、次第にその苦しみのはけ口を外へと向けていきます。それは、市役所勤めの立場を利用してストーカーにターゲットの居場所を教えることにはじまり、今回の事件に向けて恐ろしい計画を立てるという具合に徐々にエスカレートしていって・・。

 

問題は、ミスをしたことにあるのではなく、それを誰にも話さなかったことにある――。整がそう言ったように、もし橘高が自身の苦しみを誰かに話していたら、このような悲劇は起きなかったのかも知れません。一人の人間が抱える過去の過ちへの自責の念や葛藤、そして誰かに断罪されるかも知れないという恐怖心。そんな橘高の複雑な感情を考えると、強く胸が痛む思いがしました。




第10話(ファイナルエピソード!さようなら、ライカさん・・)

「私はカメラだ、何も感じないようにカメラになった。でも、もしかしたら・・、あれが楽しいとか嬉しいってことなんじゃないかと思う。」

精神科の病室で主治医に対して語った、千夜子の別人格・ライカ(門脇麦)の本音の言葉。

▶▶両親から虐待を受けていた千夜子の痛みを引き受けるため、別人格としてこの世に生まれてきたライカ。ただそれだけの存在であるべきだったはずなのに、整と出会ったことにより、楽しみや嬉しさを知り、もっと彼といたい、消えたくないと思うようになります。そして、そのことが千夜子の幸せの枷(かせ)になっていると考えた彼女は、つらいながらも春を待たずに整と別れ、自らの存在を消そうと決意します。

 

想い出づくりのために、整と一緒に初詣に行き、焼き肉店へと立ち寄ったライカ。そんな彼女との別れ際に整が言った「ライカさんの願いが千夜子さんの幸せで、それが叶うなら僕はいいと思います」が印象的でした。淡い恋を経験して、今までと心境が変化した整は、春になって咲く満開の桜の花を見て、いったい何を思ったのでしょうか。

第11話(物語はいよいよクライマックスへ!)

「この間、現場に連れて行ってもらって気付いたんです。殺人犯が現実に存在するんだってことに・・。そしたら急に怖くなっちゃって。女である自分の非力さを認めざるを得なくなりました。私、強くなりたいんです。お客様体質って言われないように――。」

自分とは正反対の性格を持つ猫田(松本若菜)と出会い、さらに備前島(船越英一郎)からの叱咤の言葉を受け、自身の刑事としてのあり方に悩む風呂光。そんな彼女が猫田に言ったセリフ。

▶▶女性としての物理的な力の弱さと、殺人犯に物怖じしてしまう精神的な弱さが、現在の自分の不遇の原因であると考える風呂光。

 

それを克服するために彼女は、単身で闇カジノに潜入して必死に行動を起こそうとしますが、猫田は、そういった気負った態度や一人で無茶をする行動の中に、本当の意味での「お客様体質」が現れていると指摘します。

 

警察は組織である以上、単独行動よりチームで動くことを求められます。何もかも一人で抱え込もうとせず、自分の弱さを素直に認め、助けが必要なときはすぐに協力を求める、そんな潔さと仲間を信頼する気持ちこそが、刑事としての大切な要素なのかも知れません。

最終話(手紙に隠された秘密・・暴かれる妹の死の真相、真実は一つじゃない)

「どうしてバージンロードは父親と歩くのが基本なんだろう。一番手間と時間をかけて育ててくれたのは母親なのに・・。――だから、一番大事な人と歩いてください。」

父親に結婚式のバージンロードを歩いてもらうことを頼みに、電車で名古屋に向かっていた美樹谷紘子(関めぐみ)。そこへ乗り合わせた整が言ったセリフ。

▶▶整が手紙のイラスト(絵手紙)を解読したことをきっかけに、家庭内暴力を振るっていた父親から守るために、実の母親が今の育ての母親・サキに自分を託したことを知った紘子。その後、彼女は、整の言葉を聞いて「育ての母と生みの母の3人で一緒にバージンロードを歩きたい・・」と涙まじりに口にします。

 

整が言うように、バージンロードを新婦と一緒に歩くのは父親でなければならないという決まりはなく、それは、結婚後に女性が名字を男性姓に変える習わしと同様、私たちがそうあるべきだと思い込んでいる一つの事象に過ぎないのかも知れません。

 

多様性が今まで以上に意識されるようになった昨今。固定観念や先入観に惑わされないためにも、整のような社会の常識や古い慣習にとらわれない多視的な物の見方・考え方を学ぶ必要があるようです。




用語解説

猫の習性 (1話)

窓辺で何かを見つめるネコ

愛猫が目を離したすきに死んでしまい、落ち込む風呂光(伊藤沙莉)。猫は昔から自分の死期を悟ったら、そっと姿を消すと言われている。この習性を、整は、大好きだった飼い主に死ぬところを見せたくないという猫の思いやりとプライドの現れだと考えた。

見えない家事 (1話)

一般的に家事と言われたら「料理」「洗濯」「掃除」「ゴミ捨て」などを思い浮かべるが、実際の家事はとても幅が広く、目に見えるものだけが家事ではない。

作中で引き合いに出された「ゴミ捨て」をとっても、ゴミ出し以外に、分別・取り替え・掃除・在庫確認・一つにまとめるなど、明確な名前のない面倒な作業がたくさんある。こういった家事に対する夫婦の認識の違いが、いさかいの大きな原因となっている。

トパーズ (Topaz)(1話)

11月の誕生石(=自分が生まれた月を象徴する宝石)で、和名は「黄玉(おうぎょく)」。無色・水色・黄色・オレンジなどの色がある。

「トパーズ」という名前は、「探し求める」を意味するギリシャ語「topazos(トパゾス)」に由来するもの。作中では、藪(遠藤憲一)の妻が、夫の幸運を願ってトパーズのネクタイピンをプレゼントした。

いじめ問題への対応の違い (2話)

日本では、いじめ問題への対応として被害者救済を主としているのに対し、欧米では、いじめをした加害者の指導やカウンセリングに重きを置いている。これは、欧米では、いじめた側の方が病んでいて、治療が必要だと考えられているからだ。

他にも、日本では、いじめを見て見ぬふりをする「傍観者」が多いのに対し、欧米では、いじめが起こった時に間に入る「仲裁者」となる子どもが多いという特徴がある。

エンジェライト(Angelite)(3話)

犬堂我路(永山瑛太)が右腕にしていたブレスレットの天然石。和名は「硬石膏(こうせっこう)」。ストロンチウムの発色による柔らかい青色が特徴で、ギリシャ語の「angelos(=天使)」を語源にしている。

「許し」を意味する石でもあり、ネガティブな感情の浄化や、心を落ち着かせる効果がある。

江戸川乱歩(えどがわらんぽ)【1894~1965】 (4話)

日本の推理小説作家。ペンネームはエドガー・アラン・ポーのもじり。代表作は「D坂の殺人事件」「人間椅子」「怪人二十面相」「少年探偵団」「黒蜥蜴(くろとかげ)」。

エラリー・クイーン(Ellery Queen) (4話)

古びた洋書と錆びた鍵

アメリカの推理作家。フレデリック・ダネイとマンフレッド・リーの合作ペンネーム。本格ミステリの巨匠と呼ばれている。代表作は「国名シリーズ」「Yの悲劇」。

アガサ・クリスティー(Agatha Christie)【1890~1976】 (4話)

イギリスの推理作家。ミステリの女王と呼ばれる。代表作は「そして誰もいなくなった」「オリエント急行殺人事件」「アクロイド殺し」「ABC殺人事件」。




三好達治(みよしたつじ)【1900~1964】 (4話)

大阪府出身の昭和を代表する詩人で、処女詩集は「測量船」。「雪」「乳母車」「大阿蘇」など、抒情的な詩を数多く残した。

爆破犯の三船(柄本佑)が物語の冒頭で口にしていたのは「乳母車」で、河川敷で「馬」と「牛」を間違えて引用したのは「大阿蘇」の一節。

ユナボマー (4話)

本名「セオドア・ジョン・カジンスキー」。アメリカのテロリスト・数学者。1975~1998年までの間に全米各地に手紙爆弾を送り、3人を死亡、22人を負傷させるという凄惨な連続爆弾事件を起こした。

彼が犯罪に走った理由として、両親からの過度の期待や飛び級によるいじめ問題、信頼していた人からの裏切りなど、さまざまな原因が考えられている。

山賊の歌(さんぞくのうた) (4話)

爆弾犯の三船が河川敷で口ずさんでいた歌。「雨が降れば~♪」の歌いだしで始まる、キャンプファイヤーなどのスカウトソングとして知られる有名な曲で、作詞を手がけたのは田島弘、作曲は小島祐嘉。

カルテット【四重奏】 (4話)

2017年1月期のTBS系火曜ドラマ。脚本は坂元裕二で、主演は松たか子・満島ひかり・高橋一生・松田龍平。ドラマ内(4話)で、世吹すずめ(満島ひかり)の名セリフ『どうして曇っていると天気が悪いって言うんですかね』が引用された。

自省録(じせいろく) (5話)

自省録/マルクス・アウレリウス
【Amazon.co.jp】超訳 自省録 よりよく生きる エッセンシャル版 

ローマ皇帝「マルクス・アウレリウス(※1)」の備忘録。軍事よりも学問を好んだとされる彼の日々の悩みや、自らの行動を省みる言葉が書き留められている。牛田(小日向文世)が同じ病院に入院していた女性(ライカ)からもらった本で、整に託された。

(※1)マルクス・アウレリウス・アントニヌス(Marcus Aurelius Antoninus)【121-180】・・第16代ローマ皇帝。五賢帝最後の皇帝。ストア派最後の哲学者としても知られ、「自省録」と呼ばれる思索の書をギリシャ語で著した。

箱の中のカブトムシ (6話)

力強く歩むカブトムシ

整の大学の心理学の先生・天達(鈴木浩介)が講義のときに引用した、哲学者ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインの有名な思考実験で、他人の心・痛みを推し量ることの難しさを示している。

■実験内容


あるグループの人々がそれぞれカブトムシの入った箱を持っていて、自分の箱は覗けるが、他人の箱は覗けない状況にある。その後、箱の中身を同じカブトムシという単語を用いてそれぞれが説明。しかし、同じ言葉を使っていても、実際は自分と他人とでカブトムシとして認識しているものがまったく違う可能性がある。つまり、自分のカブトムシは自分にしか知り得ないものであり、自分の考えていること・感情をいくら言葉で表現しても、100%相手に伝えることができない、ということを示唆している。




桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿 (6話)

――個性に応じた手の掛け方をするのが大事という意味。

桜は枝の切り口から菌が入りやすく枯れやすいので、むやみに切ってはいけない。一方、梅は古い木を切って新しい枝を伸ばせるようにしてあげたほうが、より多くの花を咲かせることができる。そういった、植物の剪定の仕方の違いから生まれたことわざ。

アンリ・ルソー (6話)

整がクリスマスプレゼントとしてライカ(門脇麦)に渡したポストカードの絵「蛇使いの女」の作者。素朴派・後期印象派の画家で、ピカソなどの前衛芸術家に影響を与えた。下手で稚拙だが魅力的という、いわゆる「ヘタウマアート」の祖として知られる。

アリ(蟻)(7話)

葉っぱの上のアリ(蟻)

美吉喜和(水川あさみ)が整との会話の中で、「漢字の成り立ちについて考えてみて」と言って引き合いに出した黒い昆虫。

「アリ(蟻)」という漢字の右側「義」の語源・由来には、「ギ」という音に起因するものや、アリの団体行動や巣の中の規律正しい共同生活に礼儀や義理・忠義を連想したなど、諸説ある。

マッチポンプ (8話)

自分で起こした問題を自ら解決して報酬・評価を得ること。自らマッチで火を付け、ポンプの水をかけて消すという自作自演行為から生まれた言葉。

ミステリー会で、ある女性が、四つ葉のクローバー(白詰草【シロツメクサ】)のしおりを作るために、庭の三つ葉のクローバーを踏みつけてまわったという話を聞いて整がこれを引用した。

252 (8話)

消防無線の通話コード(=会話を部外者に聞かれるのを避けるために用いられる隠語・符牒)で、「要救助者・逃げ遅れ」を意味する。ちなみに、955は「負傷者」、954は「死亡者」を表す。

夾竹桃(キョウチクトウ) (8話)

ピンクの花を咲かした夾竹桃(きょうちくとう)

6~9月に赤や白の花を咲かせる常緑低木で、樹木全体に毒性物質(=アンドリン)が含まれている。

漢字の「夾」には「2つを合わせる」という意味があり、「竹」のような形の葉と「桃」のような色の花を合わせ持った植物で「夾竹桃」と呼ばれている。花言葉の「油断大敵」「危険な愛」「用心」は「夾竹桃」の毒性にちなんだもの。

ピノキオ効果 (9話)

ウソをつくと鼻の周囲の温度が上がり、無意識にそこを手で触ってしまう現象のこと。ウソをつくと鼻が伸びる、童話「ピノキオ」の名前に由来する。




おみくじの運勢の並び順 (10話)

おみくじは、各神社の願いや信仰・考え方を反映させたもので、運勢の並び順についての明確な決まりはないが、一般的には、次の2つの様式に分けられることが多い。

「大吉」の次が「吉」となるもの
【並び順】大吉▶▶中吉▶小吉▶末吉▶凶
――成田山新勝寺(千葉県)、浅草寺(東京都)など

「小吉」の次が「吉」となるもの

【並び順】大吉▶中吉▶小吉▶▶末吉▶凶
――石清水八幡宮(京都府)、福島稲荷神社(福島県)など

寄木細工(よせぎざいく)(11話)

寄木細工の箱

神奈川県箱根町の伝統工芸品として有名な「寄木細工」は、さまざまな種類の木材を組み合わせて、木目の色合いの違いを利用して模様を描く木工技術で、約200年ほどの歴史がある。

発祥は古代西アジアで、シルクロードを経て日本へ伝来。江戸時代後期に静岡で発展し、その後、石川仁兵衛(いしかわにへい)という職人が技術を箱根に持ち帰り、箱根寄木細工の技法を完成させた。

ジュート (11話)

ジュートは、「黄麻(こうま)」という麻【シナノキ科】の一種から作られる繊維のことで、インドでは「インド麻」、バングラディッシュでは「ジュート」、中国では「黄麻」と呼ばれている。

麻にはいくつか種類があり、亜麻(あま)【アマ科】から作られるものは「リネン」、苧麻(ちょま)【イラクサ科】から作られるものは「ラミー」と言う。

ラピスラズリ(Lapis lazuli) (最終話)

辻浩増(北村匠海)がカウンセリングの先生からもらい受けた指輪の宝石(12月の誕生石)。青金石(ラズライト)を主成分とする混合鉱物で、和名を「瑠璃(るり)」と言う。

古くから「天空を象徴する石・神につながる石・叡智の石」として神聖視され、石にまつわる伝説・説話が世界各地に残っている。


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