
こんにちは、
りんとちゃーです。
日本の都道府県の古い呼び名である「旧国名」。
かつての日本では、「令制国(りょうせいこく)」と呼ばれる行政区分をもとに、「五畿七道(ごきしちどう)」に細かく区分され、現在とは全く異なる名で呼ばれていました。
記事では、以下のことをまとめています。
■令制国と五畿七道について
■旧国名の読み・由来・地図上の位置
旧国名(五畿七道)の読みと由来を、地図で位置を確認しながら一緒に学んでいきましょう。
令制国とは?
「令制国(りょうせいこく)」とは、奈良~明治時代までの日本の地理的行政区分のことで、かつての日本では、律令制(※1)にもとづいて、各区域に国府と呼ばれる役所を置き、中央政府のもとで地方が管理されていました。
(※1)律令制(りつりょうせい)・・「律令」とは古代日本における法律のことで、「律」は刑罰、「令」は刑罰以外(一般行政など)の法的規定を指す。中国の唐にならって奈良時代から始まった。
「令制国」では、日本列島が「五畿七道(ごきしちどう)」(=68ヶ国)に細かく区分され、「五畿」とは畿内5ヶ国のこと、「七道」とは都を中心にして地方に延びる主要な街道7つのことを指します。
以下は、その「五畿七道」の一覧まとめになります。
【五畿】
▶畿内(山城、大和、河内、和泉、摂津)
【七道】
▶東海道(伊賀、伊勢、志摩、尾張、三河、遠江、駿河、伊豆、甲斐、相模、武蔵、安房、上総、下総、常陸)
▶東山道(近江、美濃、飛騨、信濃、上野、下野、陸奥、出羽)
▶北陸道(若狭、越前、加賀、能登、越中、越後、佐渡)
▶南海道(紀伊、淡路、阿波、讃岐、伊予、土佐)
▶山陽道(播磨、美作、備前、備中、備後、安芸、周防、長門)
▶山陰道(丹波、丹後、但馬、因幡、伯耆、出雲、石見、隠岐)
▶西海道(筑前、筑後、豊前、豊後、肥前、肥後、日向、大隅、薩摩、壱岐、対馬)
旧国名(五畿七道)の読みと由来
畿内(きない)
摂津(せっつ)【兵庫県南部・大阪府北西部】
良港であったこの地は、かつて「津国(つのくに)」と呼ばれていて、その港(=津)を取り締まる(=摂)職業の「摂津職」に由来して「摂津」と呼ばれるようになりました。
山城(やましろ)【京都府南部】
古くは「山背」と表記され、「山背」の名は、都(=大和)から見てこの地が奈良山の後ろ(=背後)辺りにあったことに由来します。後にそれが、山河に囲まれた土地の形状が城のようという意味の「山城」へ表記が変わることになります。
和泉(いずみ)【大阪府南西部】
神功皇后(じんぐうこうごう)(※2)がこの地を訪れたときに、一夜にして清水が湧き出たという説話から、「出水(いずみ)」と呼ばれるようになり、それが後に泉▶和泉に変化したと言われています。
(※2)神功皇后(じんぐうこうごう)・・第14第仲哀(ちゅうあい)天皇の妻で、第15第応神(おうじん)天皇の母にあたる女性。妊娠中に軍を率いて朝鮮に渡り、韓国の三国を治めたという武勇伝を持つ。
河内(かわち)【大阪府南東部・中部】
「河内(かわち)」とは、北境にある淀川と生駒川に挟まれた「川の内(かわのうち)の方」という意味です。
大和(やまと)【奈良県】
かつてこの地域は「倭国(わのくに)」と呼ばれていて、その「倭」と同音の「和」に美称の「大」を冠して「大和」になったと言われています。
ちなみにこの地は、日本を統治していたヤマト政権があった場所でもあり、日本列島全域を表し古称として「大和(やまと)」を使うことがあります。
■旧国名のなごり①【畿内】
▶やまとなでしこ・・日本女性の美しさ・清らかさをたたえて言う言葉。
▶河内音頭(かわちおんど)・・大阪の河内地方(東部地域)で歌われてきた盆踊り唄・民謡のこと。
東海道(とうかいどう)
武蔵(むさし)【東京都・埼玉県・神奈川県(相模・川崎市)】
名前の由来についてはよく分かっていません。ちなみに、東京スカイツリーの高さ634mはこのむさし(武蔵)にちなんだものです。
常陸(ひたち)【茨城県北東部】
由来には諸説あり、代表的なものは以下の3つです。
●東北地方は昔、「日高見(ひだかみ)」と呼ばれていて、茨城県のあたりは「日高路(ひだかじ)」と称されていた。その「ひだかじ」がなまって「ひたち」になった。
●郡や郷の境界が、山▶峰▶谷と川に隔たれることなく真っ直ぐ続いていたことから「直通(ひたみち)」と呼ばれるようになり、それが変化して「ひたち」になった。
●日本神話のヤマトタケル(※3)が蝦夷(えみし)討伐の際にこの地で井戸を掘ったところ、きれいな水が湧き、それで手を洗ったら袖が濡れたという説話がある。そこから、袖を浸して濡れた(=ひたし)▶ひたちとなった。
(※3)ヤマトタケルノミコト・・第12代景行天皇の皇子。天皇の命を受けて、南九州の熊襲(くまそ)と東北の蝦夷(えみし)を討ち、大和政権の支配地を広げた。
安房(あわ)【千葉県南房総】
「阿波(あわ)の国」(徳島県)の天富命(あめのとみのみこと)が麻栽培のための良質の地を求めて、斎部(いんべ)氏を率いて房総半島南部に上陸。そのときの場所を故郷の国名と同じ「あわ」の名にしたことに由来します。
上総(かずさ)【千葉県中東部】、下総(しもうさ)【千葉県北部・茨城県西部】
この地域は良質の麻が取れたことから、かつては麻の古語にちなんで「総(ふさ)」と呼ばれていて、それが後に、郡に近い方から上総(かずさ)、下総(しもうさ)と称されるようになりました。
相模(さがみ)【神奈川県北部】
由来には諸説ありますが、正確なところは分かっていません。
甲斐(かい)【山梨県】
周囲を山に囲まれたことを意味する「山狭(やまかい)」に由来します。
伊豆(いず)【静岡県東部・伊豆諸島】
湧泉が多いことから「湧出(ゆず)」と呼ばれていて、それが変化したというものや、突出した形の半島という意味の「出ずる」に語源があるなど、由来には諸説あります。
駿河(するが)【静岡県中部】
富士川をはじめ、大井川・安倍川など、流れの速い川が多かったことから「駿(する)どい川」と呼ばれていて、それが後に「するが」に変化したと言われています。
遠江(とおとうみ)【静岡県西部】
かつては「遠淡海(とおとうみ)」と表記されていて、「遠淡海」とは、都である大和から見て遠くにある淡水湖(=浜名湖)のことです。
三河(みかわ)【愛知県東部】
大和朝廷が東方遠征を成功できたのは、矢作川(やはぎがわ)で得た弓矢のおかげであるとして、後に川の名を「御河(みかわ)」【=神の川】と命名。この「御河」が流れる国であることにちなんで「三河(みかわ)」と呼ばれるようになりました。
尾張(おわり)【愛知県西部】
由来には以下のような説があります。
●大和政権の勢力圏の東の端(=おわり)にあったことから。
●スサノオ(※4)がヤマタノオロチの尾を割って退治した時に出現した草薙(くさなぎ)の剣(※5)を管理していた一族のことを「尾割(おわり)」と言い、彼らがこの地域を治めていたから。
(※4)スサノオノミコト・・太陽神アマテラスオオミカミの弟にあたる神。荒神と呼ばれる通り、性格が乱暴で、問題事を起こしたことで天上界を追放されるが、ヤマタノオロチを倒したことで一躍英雄になる。
(※5)草薙の剣(くさなぎのつるぎ)・・八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)・八咫鏡(やたのかがみ)と並ぶ三種の神器の一つ。別名「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」。天皇家が持つ「武力」の象徴とされていて、愛知県熱田神宮(あつたじんぐう)の御神体として祀られている。
志摩(しま)【三重県志摩半島】
しま=島の意味で、島国であったことに由来します。
伊勢(いせ)【三重県東部】
国神(くにつかみ)の「伊勢津彦(いせつひこ)※6」の名にちなんだものです。
(※6)伊勢津彦(いせつひこ)・・風の神。本名は出雲建子(いずもたけこ)。神武天皇の命を受けた天日別(あめのひわけ)に国を明け渡すように求められ、強い攻勢を受けたため、強風を起こしながら東方へ去る。後にこの話を聞いた天皇が、彼の神名をとってこの地を伊勢国と詔した。――伊勢風土記より
伊賀(いが)【三重県西部】
かつては「伊勢国」の一部だったものが飛鳥時代に分離。「伊賀(いが)」の名は、この地を治めていた「猿田彦(さるたひこ)神(※7)」の娘である女吾娥津姫(あがつひめ)の「女吾(あが)」に由来するものです。
(※7)猿田彦神(さるたひこのかみ)・・猿とも天狗ともとれる風貌をした、日本神話の「天孫降臨」に登場する神。天皇の道案内をしたことから、導きの神・道の神と称されている。後にアメノウズメノミコトと結婚。
■旧国名のなごり②【東海道】
▶伊豆大島(いずおおしま)・・東京から130km南の洋上に浮かぶ伊豆諸島最大の島。島の中央部には高さ718mの活火山・三原山がそびえたつ。伊豆諸島はもともと静岡県に属していたが、廃藩置県によって東京都の所属となった。
▶房総半島(ぼうそうはんとう)・・関東地方の南東に突出する半島のこと。安房の「房」と上総・下総の「総」を組み合わせて「房総」と呼んでいたことに由来。
▶相模湾(さがみわん)・・神奈川県に面した湾状の海域のことで、日本三大深湾(富山湾・駿河湾・相模湾)の一つ。
▶駿河湾(するがわん)・・静岡県の東側に広がる湾のことで、世界文化遺産の「富士山」の南側に位置する。日本三大深湾の一つ。
▶志摩(しま)スペイン村・・三重県志摩市にある複合リゾート施設。テーマパークの「パルケエスパーニャ」、ホテル志摩スペイン村、天然温泉「ひまわりの湯」の3施設で構成されている。
▶伊勢神宮(いせじんぐう)・・三重県伊勢市にある、皇族の祖先となる祭神が祀られた神社。内宮(皇大神宮)と外宮(豊受大神宮)の二所の正宮とそれに付属する宮社からなる。
▶伊勢(いせ)エビ・・日本列島の太平洋側で穫れる大型のエビ。伊勢湾で多く穫れることからこの名が付いた。高級食材の代表格。
▶伊賀流忍者(いがりゅうにんじゃ)・・甲賀(滋賀県)の「甲賀流」と並ぶ有名な忍術流派の一つ。忍者とは、室町時代から江戸時代の日本で、大名や領主に仕えて諜報活動・暗殺などの仕事をしていた集団のこと。
東山道(とうさんどう)
近江(おうみ)【滋賀県】
かつては「近淡海(ちかつおふみ)」と表記されていて、「近淡海」とは当時の琵琶湖のことです。都(大和)から見て、琵琶湖が近くにある淡水湖だったため、「近淡海」と呼ばれていました。
美濃(みの)【岐阜県南部】
古くは「三野(みの)」と表記され、「三野」とは、青野・大野【賀茂野】・各務野(かがみの)の3つの地名を指します。
飛騨(ひだ)【岐阜県北部】
山々がヒダ状に重なっていたからという説や、田舎・辺境を意味する「鄙(ひな)」を語源とするなど、由来には諸説あります。
信濃(しなの)【長野県】
古くは「科野(しなの)」と表記され、「科」とは科の木のことです。この地域には科の木が多く自生していて、この木を使って布や縄・手綱などを作っていたことから「しなの」という呼び名がつきました。
下野(しもつけ)【栃木県】、上野(こうずけ)【群馬県】
群馬県全域と栃木県南部を合わせた地域は、かつて「毛野(けぬ)の国」と呼ばれていて、律令制定時に「上毛野国」と「下毛野国」に分国。それが後に「上野国」と「下野国」に改名されることになりました。
ちなみに、「毛」とは木のことで、「毛野」とは草木が生い茂っているという意味です。歴史の過程で「毛」の文字は消えてしまいましたが、国名の読み(しもつけ・こうずけ)にその名残が残っています。
陸奥(むつ)【青森県・岩手県・宮城県・福島県の一部】
この地域は東山道に属し、都から見て東北地方は東山道の奥にあたるので、「道の奥(みちのおく、みちのく)」と称されていました。この「道の奥」が後に「陸の奥」へ変わり、「陸奥国」と呼ばれるようになったと言われています。
出羽(でわ)【山形県・秋田県】
越後の北部の突出した場所という意味の「出端(いではし)」に由来します。
■旧国名のなごり③【東山道】
▶飛騨山脈(ひださんみゃく)・・富山県、新潟県、岐阜県、長野県にまたがる山脈。日本アルプス(北アルプス【飛騨山脈】・中央アルプス【木曽山脈】・南アルプス【赤石山脈】)の一つ。
▶信濃川(しなのがわ)・・新潟・長野両県にまたがる日本最長の川。信濃川は新潟県での呼び名で、長野県では千曲川(ちくまがわ)と名称が変わる。
▶シナノスイート・・長野県生まれのオリジナルりんご品種「りんご三兄弟®」(秋映・シナノスイート・シナノゴールド)の一つ。「ふじ」と「つがる」を交配させて作られた。果汁の多さと酸味の少なさが特徴。
▶美濃焼き(みのやき)・・岐阜県の東濃地方で生産されている陶磁器の総称で、国内生産の50%をシェアする。シンプルなデザインと作りが特徴。
▶近江牛(おうみぎゅう)・・滋賀県で飼育された黒毛和牛のブランド名。日本三大和牛( 松阪牛【三重県】・神戸ビーフ【兵庫県】・近江牛【滋賀県】)の一つ。
▶出羽山地(でわさんち)・・青森県西部から山形県北部にかけて南北に延びる丘陵地。奥羽山脈の西側(旧出羽国)に位置する。
▶奥羽山脈(おううさんみゃく)・・東北地方の中央を南北に走る日本最長の山脈。「奥羽」という名前は、旧国名の「出羽(でわ)」と「陸奥(むつ)」に由来する。
北陸道(ほくりくどう)
若狭(わかさ)【福井県西部】
朝鮮半島から南下すると、対馬海流に乗ってこの地にたどり着き、古来からこのあたりには渡来人が多くやって来ていました。そこから、朝鮮語で「往来」を意味するワカソ(ワツソ【=来る】+カツソ【=行く】の組み合わせ)の名で呼ばれるようになり、それが後に「和加佐」▶「若狭」へ転じたと言われています。
越前(えちぜん)【福井県東部】、越中(えっちゅう)【富山県】、越後(えちご)【新潟県】
石川県を除く北陸地方一帯は、かつて「越の国(こしのくに)」と呼ばれていて、それが7世紀後半、都に近い方から順に「越前」「越中」「越後」へと分国することになりました。
能登(のと)【石川県北部】
もともと越前は福井県と石川県の両方を含んでいましたが、718年に分離し、石川県のあたりが「能登(のと)」と呼ばれるようになりました。「能登」の名前は、アイヌ語で「半島・突起」を意味する「not」に由来するものです。
加賀(かが)【石川県南部】
越前から分離した「能登」が823年に分立し、北部が「能登」、南部が「加賀(かが)」と呼ばれるようになりました。「かが」は草原を意味し、この地域一帯が草原であったことに由来します。
佐渡(さど)【新潟県佐渡ヶ島】
狭い海路を表す「狭門(さど)」を語源とするものや、旧郡郷名の「雑太(さわた)」に由来するなど、名前の起源には諸説あります。
■旧国名のなごり④【北陸道】
▶越前(えちぜん)ガニ・・福井県の漁港で水揚げされるオスのズワイガニのこと。ズワイガニの中ではトップクラスのブランド品で、エサが豊富なことと、海水の冷たさが美味しさの理由と言われる。
▶佐渡島(さどしま/さどがしま)・・新潟県に属する日本海で一番大きな島。面積は約855km²。江戸時代に佐渡金山で繁栄し、現在はトキの保護センターがある場所として知られる。
▶越後屋(えちごや)・・出稼ぎ者が出身国名を名乗る時に使う屋号のこと。屋号は誰でも名乗ることができ、他に三河屋・駿河屋などがある。時代劇の悪代官と商人のあいだで交わされる「越後屋、おぬしも悪よのよう」でもお馴染み。
▶加賀百万石(かがひゃくまんごく)・・江戸時代の加賀藩の石高(その土地での米の生産量)が100万石だったことを表す言葉。
▶加賀友禅(かがゆうぜん)・・石川県金沢市を中心に作られている手書き友禅染めの着物で、自然や古典をモチーフにした絵画調の柄が特徴。
▶能登半島(のとはんとう)・・石川県の北部に突き出した半島。日本海側の海岸線の中で突出面積が一番大きい。東側(富山県側)の海岸を「内浦(うちうら)」、西側(日本海側)の海岸を「外浦(そとうら)」と呼ぶ。
▶若狭湾(わかさわん)・・福井県から京都府にかけての海岸を形成する、日本海が深く入り込んでできた湾。海岸線は典型的なリアス式。漁業が盛んで、夏には海水浴を楽しむ人で賑わう。
南海道(なんかいどう)
紀伊(きい)【和歌山県・三重県南部】
雨が多く森林が多く茂っていたことから、かつては「木の国(きのくに)」と呼ばれていて、それが後に「紀の国」▶「紀伊の国」に変化したと言われています。
淡路(あわじ)【兵庫県淡路島】
「あわじ」とは、「阿波国(あわのくに)【=徳島県】に続く路」という意味です。
「淡路」は、神々の生みの親であるイザナギ・イザナミ(※8)が初めて生み出した日本の国で、「あわじ」という読みは、不快なものを作ってしまったという意味の「我恥(あわじ)」に由来します。
(※8)イザナギ・イザナミ・・日本神話に登場する夫婦の神。二神によって日本列島と多くの神々が生み出された(「国生み」と「神生み」)。
阿波(あわ)【徳島県】
稲作が不向きで、雑穀の「粟(あわ)」を多く育てていたこの地域は「あわの国」と呼ばれていて、それが後に「阿波」と表記されるようになりました。
讃岐(さぬき)【香川県】
かつてこの地は、朝廷への貢物(=調)として矛竿(さおつき)を納めていたことから「竿調国(さおつきのくに)」と呼ばれていて、それが「さぬき」へ変化したと言われています。
伊予(いよ)【愛媛県】
由来には諸説あり、代表的なのは以下の2つです。
●道後温泉を意味する「湯」に、強調の「伊」を冠した「伊湯(いゆ)」に由来。
●温泉・湧泉を意味する「出湧(いゆ)」が転じたもの。
土佐(とさ)【高知県】
土佐国の中心地が「門狭(とさ)」【=陸地が狭くなった海・狭い海峡】に面していたことに由来します。
■旧国名のなごり⑤【南海道】
▶紀伊國屋書店(きのくにやしょてん)・・東京都目黒区に本社を置く大手書店チェーン。1927年に創業者・田辺茂一が生家が営む薪炭問屋の一部を利用して書店を開業。その際、屋号の「紀伊國屋(先祖の出身地である和歌山県に由来)」を店名に取り入れた。
▶淡路島(あわじしま)・・兵庫県南部にある瀬戸内海最大の島。農産物の生産が盛んで、中でも「淡路島たまねぎ」は、通常のたまねぎより甘くて辛味が少ないことから、サラダ用に人気がある。
▶阿波踊り(あわおどり)・・400年を超える歴史を持つ、徳島県発祥の伝統的な盆踊りのこと。8月に行われる「徳島市阿波おどり」は、全国から多くの観光客が訪れる一大イベントとなっている。
▶讃岐(さぬき)うどん・・香川県で作られているうどんのこと。弘法大師(=空海)が、遠く中国から持ち帰ったのが始まりとされる。
▶いよかん・・愛媛県松山市で生産されているみかんの地域ブランド。みかんより大きくて皮は厚め。国内生産量の9割を愛媛県が占める。
▶土佐犬(とさけん)・・高知県で闘犬(=犬同士を戦わせて勝敗を決める競技)用に生み出された体高約60cmの大型犬種のこと。「土佐闘犬」とも呼ばれる。
山陽道(さんようどう)
播磨(はりま)【兵庫県南西部】
名前の由来としては、神功皇后伝承によるものや、播磨の名産が「針(釣り針)」であったことに関係するもの、開墾された土地を意味する「墾(は)り間」が語源になったなど、諸説あります。
備前(びぜん)【岡山県南東部】、備中(びっちゅう)【岡山県西部】、備後(びんご)【広島県東部】
雑穀の「黍(キビ)」の収穫が多かったことから、岡山県のあたりは「吉備(きび)」と呼ばれていて、それが後に「備前(東部)」「備中(中央部)」「備後(西部)」の3国に分国することになりました。
美作(みまさか)【岡山県東北部】
河と坂が多いことを意味する「水間坂」が変化したというものや、「甘酒(うまさけ)」の産地であることに由来するなど、語源には諸説あります。
安芸(あき)【広島県西部】
広島湾に面した平野で湿地帯だったこの地域は、水辺の肥沃な土地を意味する「あき」の名で呼ばれていて、それが後に「安芸」と表記されるようになったと言われています。
周防(すおう)【山口県東部】
「すおう」という読みは、盆地を意味する「窄む(すぼむ)」が変化したもので、大化の改新以降に「周防」の漢字が当てられました。「周防」は、この地で名が知られていた周防国造(すおうのくにのみやっこ)からとったものです。
長門(ながと)【山口県西部】
かつては関門海峡を意味する「穴門(あながと)」の名で呼ばれていて、それが「ながと」へ変化したと言われています。
■旧国名のなごり⑥【山陽道】
▶きびだんご・・黍(きび)の粉で作った団子。かつて吉備国と呼ばれた岡山県の代表的銘菓。
▶備前焼き(びぜんやき)・・岡山県備前市で生産されている焼き物。絵付けをせず、釉薬(うわくすり)も使用しないで焼くので土味がよく表れている。
▶安芸の宮島(あきのみやじま)・・別称「厳島(いつくしま)神社」。広島県廿日市市宮島町にある島。日本三景(宮島【広島県】、天橋立【京都府】、松島【宮城県】)の一つでもある。
山陰道(さんいんどう)
丹波(たんば)【京都府中部・広島県東部】、丹後(たんご)【京都府北部】
この地域は古くは「たには」と呼ばれていて、漢字で「田庭」と表記していました。
「田庭」とは、皇大神宮(=アマテラスが祀られた神社)の御食事の稲を栽培していた広くて平らな場所のことで、古代米の赤米がたわわに実って風にそよぐさまが赤い(=丹)波のようであったことから、後に「丹波」の字が当てられることになりました。
「丹後」は「丹波」が分国してできた国で、丹波の背後にあったことから「丹後」と呼ばれています。
但馬(たじま)【兵庫県北部】
地名の由来についてはよく分かっておらず、九州の「田島(たじま)」からの移住者が多かったことに関係するというものや、「谷間(たにま)」が語源になっているなど、諸説あります。
因幡(いなば)【鳥取県東部】
かつては「稲羽・稲庭」と表記され、稲作が多く行われていた平坦地であったことに由来します。
伯耆(ほうき)【鳥取県西部】
古くは「ははき」と呼ばれていて、出雲のヤマタノオロチ神話で、オロチに飲み込まれそうになって山に逃げ込んだ稲田姫が、遅れてやって来た母親に対して「母来ませ、母来ませ」と言ったことが起源だとされています。
出雲(いずも)【島根県東部】
美しい雲が湧き出る様子を意味する「出雲」が語源というのが一般的ですが、地名学では別の解釈がされています。
出雲大社がある大社町の土地は突出していて(=出)、町内の稲佐は砂浜で大きく曲がっています(=隈)。そこから出隈(いづくま)▶出雲(いずも)になったと考えられています。
石見(いわみ)【島根県西部】
岩石が多くあったこの地域の海岸は、古くは「岩海(いわみ)」と呼ばれていて、それが後に「石見」に変化したと言われています。
隠岐(おき)【島根県隠岐諸島】
「隠岐」は、日本神話の国生みでイザナミ・イザナギが4番目に生んだ「隠岐之三子島(おきのみつこしま)」【知夫里島・西ノ島・中ノ島】のことを指し、3つの小島の親島である「沖ノ島(おきのしま)」の名をとって「おき」と呼ばれています。
■旧国名のなごり⑦【山陰道】
▶因幡(いなば)の白うさぎ・・日本神話に出てくるウサギ。大国主(おおくにぬし)がワニ(鮫)に毛皮をはがされたウサギの話を聞くところから物語は始まる。
▶丹波(たんば)の黒豆・・兵庫県丹波地方発祥の黒大豆の品種名。大きめの粒ともちもちした食感が特徴で、高級豆として抜群の知名度を誇る。
▶但馬牛(たじまうし)・・兵庫県で生産されている黒毛和種の和牛のこと。この和牛からとれる牛肉は、ブランド名で但馬牛(たじまぎゅう)と呼ばれる。
▶出雲大社(いずもたいしゃ)・・縁結びの神様である大国主を祀った、島根県出雲市にある神社。正式名は「いずものおおやしろ」。
▶石見銀山(いわみぎんざん)・・島根県大田市にある、戦国~江戸時代にかけて最盛期を迎えた日本最大の銀山。2007年に世界遺産に登録された。
西海道(さいかいどう)
筑前(ちくぜん)【福岡県北西部】、筑後(ちくご)【福岡県南部】
福岡県東部を除いた地域は、かつて「筑紫(つくし)」と呼ばれていて、それが後に「筑前」と「筑後」に分国することになりました。
「つくし」の名の由来には、西の果てを意味する「尽くし」を語源とするものや、太宰府への石畳の道を築いたことを意味する「築石(つきいし)」が変化したなど、諸説あります。
肥前(ひぜん)【佐賀県・長崎県】、肥後(ひご)【熊本県】
火山が多い九州全土はかつて「火の国(肥の国)」と呼ばれていて、それが後に熊本県・長崎県・佐賀県のみを指すようになりました。「肥前」と「肥後」はこの「肥の国」が分国してできたものです。
豊前(ぶぜん)【福岡県東部】、豊後(ぶんご)【大分県中南部】
土地が豊かで広大だったこの地域は、かつて「豊(とよ)の国」と呼ばれていて、それが後に「豊前」と「豊後」に分国することになりました。
日向(ひゅうが)【宮崎県】
この地域は、太陽が出る東に位置していたことから「日向か(ひむか)の国」と呼ばれていて、それが「日向」の語源になっています。
大隅(おおすみ)【鹿児島県東部】
「大」は美称、「隅」は端・奥を意味し、都(大和)から見て離れた最果ての地(=隅)であったことに由来します。
薩摩(さつま)【鹿児島県西部】
古くは「幸島(さちしま)」と呼ばれていて、「幸」は、南九州にいた神話の登場人物・海幸彦(うみさちひこ)と山幸彦(やまさちひこ)(※9)の名からとったものです。
(※9)海幸彦/山幸彦・・海幸山幸神話に登場する神。正式な名は「ホテリ(兄:海幸彦)」と「ホオリ(弟:山幸彦)」。ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの間に生まれる。コノハナサクヤヒメは、自身の潔白を証明するために、火を放った小屋の中で二神(ホテリとホオリ)を生んだ。
対馬(つしま)【長崎県対馬島】
もともとは「津島」と表記されていて、「津」とは港のことです。2つ(=対)の島で構成されていたことにちなんで、後に「対馬」の漢字が当てられました。
壱岐(いき)【長崎県壱岐島】
中国・朝鮮半島と日本のあいだの交易の要所であり、大陸に「行く」途中に位置する島であったことから「いき(=往き)」と呼ばれています。
■旧国名のなごり⑧【西海道】
▶筑前煮(ちくぜんに)・・鶏肉、椎茸、こんにゃく、竹の子、ごぼうなどを一口大に切って油で炒め、甘辛く味付けした煮物のこと。筑前地方(福岡県北西部)の郷土料理。
▶筑後川(ちくごがわ)・・阿蘇山を水源として、熊本・大分・福岡・佐賀の4県を流れる九州最大の河川。
▶日向夏(ひゅうがなつ)・・温州みかんよりやや大きく、果皮はレモンのような淡黄色で、白皮が厚くやわらかい柑橘類のこと。宮崎県で全国の半分以上を生産している。
▶さつまいも・・鹿児島県での栽培が盛んで、その生産量は全国1位。琉球(沖縄県)から薩摩(鹿児島県)を経て九州に伝わったことから「さつまいも」の名で呼ばれている。別名「唐芋(からいも)」【=外国の芋】、「甘藷(かんしょ)」【=甘い芋】。
▶対馬海流(つしまかいりゅう)・・日本海側を流れる暖流。太平洋側を流れる暖流・黒潮の一部が対馬海峡で日本海に入り北上したもの。日本近海の海流には他に、日本海側の寒流・リマン海流と、太平洋側の寒流・親潮(千島海流)がある。
その他の地域
蝦夷(えみし、えぞ)【北海道】
「蝦夷(えみし)」は、アイヌ語で「人」を意味する「imichin、enchn」に由来する言葉で、東国(東北地方)・北方(北海道・樺太)に住み、中央政府に属さなかった部族全体のことを指します。
琉球(りゅうきゅう)【沖縄県】
島の形が中国の伝説上の水神・蛟(みずち)に似ていることから、琉蛟(中国読みで「りうこう」)と表記され、それが後に「琉球」へ変化したと言われています。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
旧国名は、もともとあった読み方に対して縁起の良い二文字の漢字を当てたという歴史的背景があるので、読みの難解なものが非常に多いです。そのため、勉強する際には、名前の由来を調べたり、地名・名産品と関連付けて覚えるなどの工夫が必要になります。
余力のある方は、今回まとめた記事の内容を参考に、全ての旧国名の読みと地図上の位置の暗記にチャレンジしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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