【花札8月】十五夜満月に供えしススキ(芒)と団子|中秋の名月と「月うさぎ伝説」

色彩あふれる花札のイメージ写真花札

 こんにちは、

 りんとちゃーです。

花札8月札に描かれた「ススキ(芒)」「月」「雁(かり)」

花札8月札/左から順に「芒(ススキ)に月」「芒に雁」「芒のカス」「芒のカス」
(左から順に、「芒(ススキ)に月」「芒に雁」「芒のカス」「芒のカス」)

別名「坊主」と呼ばれる8月札のモチーフとなったのは、旧暦8/15の「中秋の名月」にススキを供えてお月見をする「十五夜」の行事です。

記事では、以下のことをまとめています。

「ススキ(芒)」の語源・特徴
十五夜と中秋の名月、お供え物の意味と「月うさぎ伝説」

「雁(かり、ガン)」の種類とV字編隊飛行

「月うさぎ伝説」のエピソードと一緒に、「十五夜」や「ススキ」「雁」について学んでいきましょう。




ススキ(芒)

風にそよぐススキ(芒)の穂

■基本情報


分類:イネ科イネ属の多年草

学名:Miscanthus sinensis

英名:Eulalia

和名:芒、薄、ススキ

異名:尾花、茅・萱(かや)、乱れ草、袖振草

原産地:中国、朝鮮半島、日本、台湾

開花時期:9~10月

花言葉:活力、生命力、元気

生態・特徴

「ススキ(芒)」は、十五夜飾りをはじめ、蒔絵(まきえ)の秋草模様・茅葺(かやぶき)屋根の茅などに使われている、日本人にとても馴染み深い植物です。

「秋の七草(※1)」の一つにも数えられ、穂のかたちが動物の尻尾に似ていることから、別名で「尾花(おばな)」と呼ばれています。

(※1)秋の七草・・秋を代表する「萩(はぎ)・芒(すすき)・葛(くず)・撫子(なでしこ)・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)・桔梗(ききょう)」の草花7つこと。秋の七草は、春の七草のように食すものではなく、冬になる前にその美しい花の姿を愛でて鑑賞し、楽しむもの。

▶▶関連記事:【花札7月】「萩と猪」から見る対照美|特徴と由来・秋の七草

草丈は1~2mくらいで、夏に青々とした葉を広げ、秋になると枝分かれした部分に小穂を密生させます

ススキの花言葉は「活力」「元気」で、これはススキがとても生命力の強い植物で、厳しい環境の土地でも根を下ろして繁殖できることに由来するものです。

由来・語源

「ススキ」の漢字表記は「芒」で、これは、ススキの小穂の先に「芒(のぎ)」と呼ばれる棘(とげ)状の突起があることに由来します。

読みの「ススキ」の由来には諸説あり、「スクスク」と育つ木(=草)であるからというものや、稲に似た草の「ススケ」が転じたなど、さまざまです。

■豆知識①『幽霊の正体見たり枯れ尾花』


「幽霊の正体見たり枯れ尾花」「ススキ(尾花)」を用いた有名な故事成語で、「幽霊と思ったらススキだった――」すなわち「怖いと思って見たら、何でもないものまで怖く見えてくる」という意味になります。

十五夜

闇夜に浮かぶ中秋の名月(十五夜満月)

旧暦8/15の「中秋(ちゅうしゅう)の名月」の日に、お月さまに団子やススキを供えて、秋の収穫に感謝する行事のこと「十五夜(じゅうごや)」と言います。
※2023年の中秋の名月は9月29日(金)

「十五夜」は平安時代に中国の唐から伝わった慣習で、当初は貴族が風雅に月を愛でるというものでした(=月見の宴)。

それが後に作物の収穫祭と結びついて、庶民が実りの象徴として月を観賞するようになり、次第にお供え物をして感謝や祈りを捧げるように変化していきました。

中秋の名月と仲秋の名月

「中秋の名月」「仲秋の名月」と称されることもあり、両者には次のような違いがあります。

中秋の名月

旧暦における秋の期間は7月~9月までで、そのちょうど真ん中にあたる8/15のこと「中秋」と言います。つまり「中秋の名月」とは、『秋の真ん中旧暦8/15)』の名月のことを指します。

仲秋の名月

旧暦では、秋の3ヶ月間(7月~9月)を三兄弟に見立てて、それぞれ次のように呼び分けています。

孟秋(もうしゅう)旧暦7月
仲秋(ちゅうしゅう)旧暦8月
季秋(きしゅう)旧暦9月

※孟・仲・季といった頭文字には意味があり、それぞれ「はじめ=孟」「2番目=仲」「最後=季」を表す。

「仲秋」秋の次男坊(旧暦8月)にあたるので、「仲秋の名月」は、『旧暦8月』の名月を指すことになります。

▶▶一般的に「十五夜」は、前者の「中秋の名月」の名で呼ぶことが多いですが、後者の「仲秋の名月」の名で呼んでも意味的には間違いではありません。




お供え物

十五夜に供える月見団子

お月見の際に供えられる「ススキ」「月見団子」「里芋」には、それぞれ次のような意味合いがあります。

ススキ

中秋の名月に「ススキ」を飾る理由として考えられているのは次の2つです。

①茎の内部が空洞になっている「ススキ」は、古くから神さまの「依り代(よりしろ=精霊・神霊が依り憑くもの)」になるものだと考えらていて、悪霊や災いから収穫物を守るために、お月見の際に一緒に供えられた。

②豊穣の象徴である満月が出る十五夜(中秋の名月)に、収穫への感謝を込めて米や豆・芋などを供える風習があり、その際に、まだ実っていない稲穂の代用として、見た目のよく似た「ススキ」が供えられたから

月見団子

「満月」に見立てた丸い形の「月見団子」には、秋の収穫への感謝と健康・幸福祈願の意味が込められていて、供えた後に食べることで、健康と幸福が得られると言われています。

お団子の数には決まりがあり、「十五夜」にちなんで15個供えるのが基本で、地域によっては、その年に見られる満月の回数の12個(うるう年の時は13個)を供えることもあります。

里芋

「中秋の名月」は、別名で「芋名月」と呼ばれるように、ちょうど里芋の収穫期にあたり、近畿や中国地方などの一部地域では、収穫物の「里芋」が供えられています。

 サトイモ型の

 お団子を供える

 地域もあるよ。

月うさぎ伝説

わけあり顔のうさぎさん

お月見と言えば、月のうさぎが餅をつく場面をイメージしますが、実はこれはインドに古くから伝わる「月うさぎ伝説」に起源があります。

ここでは、いくつかある「月うさぎ伝説」の中の一般的なストーリーを紹介したいと思います。

■あらすじ


むかしむかし、あるところに「うさぎ」と「きつね」と「さる」の3匹の動物がおりました。

 

ある日、彼らはこんなことを話し合いました。

 

「おいらたちがけものの姿をしているのはなんでだ?」

「前世でなにか悪いことをしたからじゃないの?」

「なら、よいことをすれば報われるのかなぁ。」

 

その会話をこっそり聞いていた月の神さまの「帝釈天(たいしゃくてん)」は、3匹に何か良いことをさせてあげようと思い立ち、老人の姿になって彼らの前にあらわれます。

 

老人は言いました。

 

「腹が減って動けないわい。何か食べ物をめぐんでくれんかのう?」

 

それを聞いた3匹は「これは良いことができる絶好のチャンスだ!」と喜び、老人のために食べ物を探しにいきます。

 

しばらくして、さるは「木の実」、きつねは「魚」をとってきました。しかし、残念ながらうさぎは何もとってくることができませんでした。

 

そこでうさぎは、

 

「わたしには食べ物をとってくる力がないようです。どうか代わりに私を食べてください。」

 

と言って、燃え盛る火の中に飛び込み、自らの身体を老人に捧げてしまいます。

 

そのことを大変哀れに思った老人(帝釈天)は、うさぎの姿を月の中によみがえらせて、皆のお手本として永遠に残すようにしたのです。

■豆知識②『うさぎが餅つきをしているのはなぜ?』


うさぎが餅つきをしている理由としては、「老人のために餅をついている」とか、「うさぎが食べものに困らないようにするため」とか、「米の収穫に感謝するため」だとか諸説ありますが、正確なところは分かっていません。




雁(かり・ガン)

地上でくつろぐ白い雁(かり)の群れ

分類・種類

「雁(かり、ガン)」は、秋になると越冬のためにシベリアから日本にやって来る渡り鳥の一種で、一般的には、カモ科カモ目の水鳥の中で、鴨(カモ)より大きく白鳥(ハクチョウ)より小さい一群の総称のことを指します。

▼参考:同じカモ科に属する「雁(ガン)・鴨(カモ)・白鳥(ハクチョウ)」の大きさ▼

鴨(カモ)・・約50cm

雁(ガン)・・60~90cm

白鳥(ハクチョウ)・・100cm以上

日本では主にマガン・ヒシクイが生息し、日本最大の雁の越冬地は宮城県北部の伊豆沼と蕪栗(かぶくり)沼です。かつては狩猟が盛んに行なわれていましたが、個体数の減少により保護動物に指定され、現在では狩猟が全面的に禁止されています。

ちなみに、国語の教科書に載っていた「大造じいさんとガン」は、頭の良い雁の「残月」とそれを捕まえようとするおじいさんの知恵比べを描いたお話です。

特徴

「雁」には、群れで飛行する際に「V字型の編隊」を組む特徴があります。

V字型を組むと、先頭を飛ぶ鳥の後ろに上昇気流が発生し、揚力が生まれます。この揚力を利用して、後方の鳥は通常よりも小さなエネルギーで飛んでいるのです。

ただこの場合、先頭を飛ぶ雁への負担が大きくなってしまうため、雁たちは時折、先頭を交代して負担を分散するようにしています。

■豆知識③『「ひろうす」「雁擬き(がんもどき)」』


がんもどきのイラスト

「雁擬き(がんもどき)」は、豆腐に山芋・卵を加え、野菜を混ぜ合わせて油で揚げた料理で、関西では「ひろうす」の名で親しまれています。「ひろうす」と「雁擬き」の言葉の由来は以下の通りです。
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ひろうす・・ポルトガル語で小麦粉と卵を混ぜて油で揚げたお菓子を意味する「フィリョ―ス(filhos)」が語源。もしくは「フィリオ―ス」と製法がよく似た豆腐料理であったことから。

雁擬き・・もともとは「糟鶏(そうけい)」と呼ばれるコンニャクで作った精進料理の一つだった。その味が、雁(がん)の肉に似ていることから、後に「雁擬き(がんもどき)」の料理名になった。




おわりに

いかがでしたでしょうか。

では、内容をおさらいしましょう。

秋の七草の一つである「ススキ(芒)」は、別名「尾花」とも呼ばれ、茅葺き屋根やほうきなどに利用されている。

「中秋の名月」は秋の真ん中の8/15の晩に出るお月さまのことで、「仲秋の名月」は8月の1ヶ月間の毎晩に出るお月さまのことを指す。

お月見の際に供えられる「ススキ」「お団子」「里芋」「ぶどう」にはそれぞれ意味がある。

月のうさぎの餅つきは、インドの「月うさぎ伝説」がルーツとされる。
「雁」は、一般的に「鴨(カモ)より大きく白鳥(ハクチョウ)より小さい一群の総称」のことを指し、飛行時に「V字型の編隊」を組む特徴がある。

2023年の「中秋の名月」は『9/29(土)』。

蒸し暑い夏と違って、秋は身も心も心地よく感じるシーズン。名月の日には、涼しい夜風を肌に受けながら、美しいお月さまを優雅に愛でたいものですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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