【花札6月①】牡丹(ぼたん)から広がる植物の世界|花言葉・ことわざ・彼岸のぼた餅

色彩あふれる花札のイメージ写真花札

 こんにちは、

 りんとちゃーです。

花札6月札の絵柄として描かれている「牡丹(ぼたん)」の花は、花の王さまを表す「花王」の名に恥じないくらい、堂々とした外観をしています。

▼6月札に描かれている牡丹。バラではありません▼
花札6月札/左から順に「牡丹に蝶」「牡丹に青短」「牡丹のカス」「牡丹のカス」
(左から順に「牡丹に蝶」「牡丹に青短」「牡丹のカス」「牡丹のカス」)

その見た目の美しさと高貴さから古来より日本人に愛され続け、「牡丹餅(ぼたもち)」「牡丹鍋(ぼたんなべ)」の言葉があるように、庶民の間にも親しまれてきました。

記事では、以下のことをまとめています。

「牡丹(ぼたん)」の特徴と歴史

漢字表記「牡丹」の由来と花言葉、食べ物

ことわざ「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」について

知っているようで知らない「牡丹」の雑学について、一緒に勉強していきましょう。

▼牡丹と一緒に描かれている「蝶」についての記事はこちら▼

関連記事:【花札6月②】蝶(チョウ)が舞い寄るトリビアの花|伝統和柄「蝶文様」と完全変態




特徴・歴史

淡いピンクが美しい牡丹(ぼたん)の花

■基本情報


分類:ボタン科ボタン属

学名:Paeonia suffruitcasa(※1)

和名:牡丹、ぼたん

英名:tree peony

別名:富貴草、花王、百花の王、二十日草、木芍草など多数

原産地:中国北西部
開花時期:4~5月

花色:赤、淡紅、黄、オレンジ、白、紫

花言葉:風格、富貴、恥じらい

都道府県の花:島根県

(※1)ギリシャ神話における医薬の神「Paeon(ペオン)」に由来。

ボタン科の落葉低木である「牡丹(ぼたん)」は、楊貴妃(ようきひ)の美貌(びぼう)の形容にも使われた魅惑的な花で、古くから絵画や工芸品の意匠として用いられてきました。

開花時期は4~5月で、古くは赤い色の花が主流でしたが、現在では品種改良によって紫・淡紅・白など、様々な色の「牡丹」が作られています。

歴史的にみると、原産国の中国(=唐)から奈良時代(8世紀頃)に「空海(弘法大師)」が薬用植物として持ち帰ったものが起源とされていて、その後、江戸時代にドイツ人のケンペルがヨーロッパに紹介。幕末から明治に「牡丹の苗」が日本からヨーロッパ各地に輸出されたこともあって、今では世界中でその姿を見ることができます

語源・由来

咆哮する百獣の王

漢名表記の「牡丹」は、「盛んな、雄々しい」という意味の「牡」と、上乗(=仏教の最高の教え)をあらわす「丹色(赤)」「丹」を組み合わせたもので、それぞれが、春に雄々しく芽を出す(=牡)原種の花が濃い赤色(=丹)という「牡丹(ぼたん)」の特徴に対応しています。

ちなみに「牡丹」には、他の品種の花の花粉が付かないと種ができない、いわゆる自家不和合性の特性があるため、できる種は親とは異なる性質を持ちます。

なので、種から育てた場合、その苗木の花の色や大きさがばらばらになり、もっぱら挿し木や接ぎ木で増やされていました。

それが種を作って増やす「雌(メス)」よりも、「雄(オス)」的なものであると捉えられて、名前に「牡(オス)」の字が当てられたのではないかとする説もあります。

花言葉

「牡丹(ぼたん)」の花言葉「風格」「富貴」「恥じらい」の3つで、それぞれ次のような由来があります。

●風格・・花びらが幾重(いくえ)にも重なり、毬(まり)状に丸まったその姿が王さまのように見えたことから。

●富貴・・中国の儒学者・周敦頤(しゅうとんい)が書いた『愛蓮説(あいれんせつ)』の一節「牡丹は花の富貴なるものなり」に由来。

●恥じらい・・花の中央を隠すようにして咲く姿が、恥ずかしがっているように見えたことから。




食べ物

和菓子の代表格「牡丹餅(ぼたもち)」

春のお彼岸に食べる和菓子の「ぼたもち(牡丹餅)」の名前は、春に咲く植物の「牡丹(ぼたん)」からとったもので、秋のお彼岸に食べる「おはぎ(お萩)」は、秋に咲く「秋の七草」の一つの「萩(はぎ)」を語源にしています。

また、「猪(いのしし)」の肉を用いた鍋のことを「牡丹(ぼたん)鍋」と言いますが、これは、盛りつけた肉が「牡丹の花」のように見えたことにちなんだものです。

ことわざ

白く咲き誇る百合の花

有名なことわざに「立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹(ぼたん)、歩く姿は百合(ゆり)の花」がありますが、これは美しい女性の立居振る舞いを形容したもので、意味を簡単にまとめると次のようになります。

立てば芍薬・・すらりと伸びた茎の先に美しい花を咲かす様子 = 『女性の立ち姿』

座れば牡丹・・枝分かれした横向きの枝に花をつけるさま = 『座っている女性の姿』

歩く姿は百合の花・・しなやかな茎の先に咲いた花が風で揺れる姿 = 『優雅に歩く女性の姿』

実はこの「ことわざ」、本来は「生薬の使い方」を表す言葉だったそうで、3つの花の「生薬としての効能」と「症状」が対の関係になっています。

対応する関係をまとめると以下の通りです。

立てば芍薬・・気が立ってイライラした時 ⇨ 気を鎮める効能がある『白芍(びゃくしゃく)・赤芍(せきしゃく)』

座れば牡丹・・座ってばかりいて血流が悪くなった時 ⇨ 滞った血液の流れを良くする『牡丹皮(ぼたんぴ)』

歩く姿は百合の花・・ゆらゆらと歩いてしまう心身症の人の不安や不眠 ⇨ 精神安定作用のある『百合(びゃくごう)』

■豆知識②『芍薬・牡丹・百合の生薬の特徴と効能』


芍薬・・皮を乾燥させたものを「白芍(びゃくしゃく)、皮付きのものを「赤芍(せきしゃく)」と言う。「芍」は「薬」という意味で、「芍薬」は「薬の中の薬」という意味。

【効能】鎮痛・鎮静・筋弛緩

【配合漢方薬】「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」

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牡丹・・牡丹の根の皮を乾燥させたものを「牡丹皮(ぼたんぴ)」と言う。

【効能】解熱・鎮痛・消炎・婦人科系の症状緩和

【配合漢方薬】「大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴゆ)」「六味地黄丸(ろくみじおうがん)」

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百合・・百合の鱗茎の鱗片を乾燥させてものを「百合(びゃくごう)」と言う。

【効能】消炎・利尿・精神安定作用

【配合漢方薬】「百合知母湯(びゃくごうちおとう)」「百合地黄湯(びゃくごうちおうとう)」

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牡丹と芍薬

赤い芍薬(しゃくやく)の花

前述した「芍薬(シャクヤク)」は、初夏に赤や白の大きな花を咲かせる、アジア原産の古典園芸植物で、かつては「薬用植物」として使われていました。

現在では品種改良が進んで、形や色のバリエーションも増加。観賞用並びに切り花として広く日本人に親しまれています。ちなみに「芍薬」は、「牡丹(ボタン)」と同じ「ボタン科ボタン属」に分類され、花だけ見るとほとんど見分けがつきません

そんな混同されやすい両者は、以下の部分を見ることで区別することができます。

牡丹(ぼたん)と芍薬(しゃくやく)の見分け方




おわりに

いかがでしたでしょうか。

では、最後に内容をおさらいしましょう。

ボタン科ボタン属の「牡丹(ぼたん)」は、奈良時代に「空海」が持ち帰ったものが起源で、富や高貴を象徴する花として日本人に愛されてきた。
「牡丹」の漢字は、雄々しいという意味の「牡」と、赤色を示す「丹」の組み合わせたもので、種ではなく接ぎ木で増やす「オス(牡)的な特性」を語源とする説もある。
春に咲く「牡丹」の名前にちなんで、お彼岸に食べる「あんこもち」のことを「ぼたもち」と言うようになった。
「立てば芍薬、座れば牡丹~」は、女性の立ち居振る舞いの形容を表したことわざで、もともとは生薬の効能を示していた。

華麗な大輪を咲かせる牡丹の花が、生薬としての薬効を秘めているというのは驚きですね。

ちなみに、皆さんの中には「牡丹の花の見頃は4、5月なのに花札の6月の絵札に描かれているのはなぜ?」と疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。

これは推測ですが、次の7月札が「萩に猪」なので、牡丹を描くことによって「牡丹餅▶お萩、牡丹鍋▶猪」と、次札の絵柄を暗示していたのではないかと思われます。

本当のところはどうなんでしょうか。あれこれ想像してみるのも面白いかも知れませんね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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