【花札1月②】長寿と縁起を象る「鶴(ツル)」の世界|千羽の鶴に願いを込めて

色彩あふれる花札のイメージ写真 花札

 こんにちは、

 りんとちゃーです。

花札1月札の絵柄に描かれている「鶴(ツル)」

花札1月札|左から順に「松に鶴」「松に赤短」「松のカス」「松のカス」
(左から順に「松に鶴」「松に赤短」「松のカス」「松のカス」)

「鶴」は、花札をはじめ、掛け軸や屏風など、とりわけ松の木に止まっているところを描かれる事が多いですが、実際にはタンチョウヅル・マナヅル・ナベヅルなど、その多くが木にとまる習性を持っていません

おそらくは、「鶴」と同じ長寿の象徴である「松」をペアで描くことで、縁起担ぎの意味合いを込めていたのでしょう。

また、夜に目が見えないことを意味する言葉に「鳥目(とりめ)」がありますが、夜中に渡来することの多い「ツル」は、鳥類の中でも珍しく「鳥目」ではなく、暗いところでも目が見えます。

そんな知っているようで知らないことが多い「鶴(ツル)」

記事では以下のことをまとめています。

「鶴(ツル)」の生態・ことわざ
鶴をあしらった「吉祥文様」と「千羽鶴」
「タンチョウヅル」の特徴

日本人に親しみ深い「鶴(ツル)」の雑学に触れながら、彼らの住む白銀の世界へと舞い降りてみましょう。

▼鶴と一緒に描かれている植物「松(マツ)」の記事はこちら▼
関連記事:「松(マツ)」の種類と縁起物の門松|松コースの知識をご賞味あれ




鶴(ツル)

鶴とは

雪原に佇む鶴(ツル)の群れ

ツル科ツル属の総称である「鶴(ツル)」は、体長が1mくらいで、くちばし・首・脚が長く、主に沼地や湿地に生息しています。

植物の芽や葉・カエル・昆虫などを食し、繁殖期には地上に小枝や藁で巣をつくって1~4個の卵を産卵。雌雄交代であたためてヒナを孵(かえ)します。

世界に生息する「鶴」は15種類で、そのうち日本で見られるのは以下の7種です。

「タンチョウヅル」「ナベヅル」

「マナヅル」「クロヅル」「アネハヅル」

「ソラグロヅル」「カナダヅル」

ちなみに「鶴」は、川や海の浅瀬などの水位が低いところをねぐらにしていますが、その主な理由は、水辺には天敵が侵入しにくく、水面を伝わる波紋で外的の存在に気付くことができるからだと言われています。

■豆知識①『鶴の名湯(めいとう)』


読み方の難しい温泉としても知られる、青森県黒石市にある「温湯(ぬるゆ)温泉」。この温泉には、足をケガした鶴が舞い降りて傷を癒やしたという伝説があり、それにちなんで別名「鶴の名湯」と呼ばれています。

ことわざ

会社の経営状況についてデータを用いながら話し合う2人

鶴の一声

職場の会議などで意見の不一致・対立が起きた際に、権力者・権威者が発する「議論を結論づけるような一言」のことを「鶴の一声」と言い、「社長の『鶴の一声』で会社の方針が決定した」のように用いられています。

一般的な「鶴」は、「鳴管(めいかん)」と呼ばれる発声器官が発達していて、この「鳴管」で音が増幅されることによって、周囲に響き渡るような大きな声が出ます。

「鶴の一声」は、この「鶴」の迫力ある大きな鳴き声に由来するものです。

タンチョウヅルの吹き出し

 ツルの鳴き声は、

「金管楽器」によく

 例えられるよ。

また、「鶴の一声」の対義語に、「つまらない者、力のない者のたくさんの言葉」を意味する「雀の千声(せんこえ)」というものがあります。

かつて「鶴の一声」は、「聞く人の心を動かすような抜きん出た言葉」の意味で使われていましたが、この「雀の千声」と対比されるようになってからは、「力を持つ者の大きな発言」といったニュアンスを込めるようになったと言われています。

鶴は千年、亀は万年

「鶴は千年、亀は万年」は、「長寿」や「めでたいこと」をお祝いする時に使われる言葉で、中国・前漢時代の思想書「淮南子(えなんじ)」に記された「鶴歳千歳、亀歳三千歳」の一節に由来します。

「千歳」とありますが、実際の鶴が千年も生きることはなく、野生のタンチョウの寿命で20~30年、飼育されたタンチョウでも50~80年程度です。とは言え、一般的な鳥の平均寿命の「1年半」に比べたら長生きに分類されるので、「寿命の長い生き物の象徴」としてこのような言葉が生まれたと考えられます。

また「鶴」は、夫婦仲が良くて生涯連れ添うことから、「仲良い夫婦の象徴」として結婚式の縁起物などにもよく使われています。

■豆知識②『鳥の寿命』


野生の鳥は、春に生まれた子どもが翌年の春まで生きのびることがほとんどできないため、平均寿命が短く、スズメで「1年3ヶ月」、シジュウカラで「1年8ヶ月」、ツバメで「1年1ヶ月」ほどです。ちなみに、他の鳥では、インコが「7年」、ハト・カラスが「10年」、フクロウ・オウムで「60年」となっています。

■豆知識③『亀の寿命』


ウミガメ・リクガメなどの一般的な亀の平均寿命は「30~50年」と、比較的長生きです。長寿の理由には、「冬眠・夏眠をすること」「代謝がおだやかでエネルギー消費が少ないこと」があげられます。




着物と鶴紋

鶴(ツル)をあしらった着物

「鶴」は、「長寿」「夫婦円満」を象徴する縁起の良い存在として、古くからお宮参り・成人式・結婚式などで着る「振り袖の柄(吉祥文様※1)」に用いられてきました。

(※1)吉祥文様(きっしょうもんよう)・・良いきざしや縁起の良い印を意味する文様の総称。中国伝来のものが多いが、日本発祥のものもある。代表的な文様は「七宝(しちほう)」「亀甲(きっこう)」「唐草(からくさ)」など。

鶴をあしらった「吉祥文様」には以下のものがあります。

飛鶴(ひかく)文・・飛んでいる鶴の姿を模したもの。

折鶴(おりづる)文・・折り紙の鶴を文様にしたもの。千羽鶴のように、たくさんの折り鶴をあしらったものもある。

向鶴(むかいづる)文・・二羽の鶴を向かい合わせて、円形やひし形になるよう文様化したもの。

松喰鶴(まつくいづる)文・・花喰鳥文の一種。鶴が松の小枝を加えているところが描かれている。

鶴亀(つるかめ)文・・長寿の象徴である鶴と亀を組み合わせた吉祥文様。

千羽鶴

和紙で作られた折り鶴(おりづる)

「千羽鶴(せんばづる)」は、折り鶴を千羽(たくさん)折って糸で束ねたもので、けがや病気の人へのお見舞いをはじめ、スポーツ試合の必勝祈願、広島平和記念公園への寄贈や被災地の復興など、様々なシーンで使われています。

それにしても、どうして「千羽の鶴」を折るのでしょうか?

以下はその理由のまとめになります。

「折り鶴」の起源

神さまへのお礼のために、鶴を折って神社に奉納したことが起源とされていて、その後、江戸時代に庶民の間で「長寿の象徴であるツルを折れば寿命が伸びる」と噂が広まって、世間一般でも折り鶴が折られるようになったと言われています。

「千羽折る」理由

「鶴は千年だから」とか「千は縁起が良いから」とか諸説ありますが、正確なところは分かっていません。

「病気回復」の意味を持つ理由

これには、戦時中に兵隊がお守りとして携帯していた「千人針(せんにんばり)」が関係しています。

「千人針」とは、千人の女性が、布に赤糸をひと針ずつ縫い付けて作ったもので、身につけていれば弾丸よけの効果があるとされていました。この風習が、戦後に病気回復を願う「千羽鶴」へと形を変えていったと言われています。

「平和の象徴」である理由

そのルーツは、広島平和記念公園の「原爆の子の像」のモデルになった「佐々木貞子さん」のエピソードにあります。

貞子さんは、広島の原爆投下によって被爆し、急性白血病を発症して苦しい闘病生活をおくっていました。そのときに「折れば願いが叶うから」と言って折り続けていたのが「千羽鶴」でした。しかし願いむなしく、彼女は12歳という若さでこの世を去ってしまいます。

この物語は世界中に広まり、後に「原爆の子の像」が作られ、彼女の折り続けた「千羽鶴」「平和の象徴」として尊ばれるようになったのです。




タンチョウヅル

白銀の大地で羽根を広げる丹頂鶴(タンチョウヅル)

「JALのジャンボジェット機」にも描かれている、白く美しい羽毛と頭頂部の鮮やかな赤色が特徴の「タンチョウヅル」

■基本データ


分類:ツル科ツル属
生息地域:北海道東部エリア、ロシア南東部、中国東北部、韓国北部
漢名:丹頂鶴
学名:Grus japonensis
英名:Japanese crane /Red-crowned crane

由来・語源

頭頂部から後頭部にかけて赤い色をしていることにちなんで、「赤い(=丹)頭頂部(=頂き)を意味する漢字「丹頂」を当てて「丹頂鶴」と表記されています。

英名の「crowned」「戴冠(たいかん)」の意味で、「王に即位した後に初めて頭に載せる冠」を表しています。

歴史

「タンチョウヅル」は、江戸時代までは北海道全域に生息していましたが、明治時代の頃の乱獲と開発による生息地(湿地帯)の減少で、現代では「北海道の東部エリア(釧路湿原)」にしか生息していません。

一時期7羽にまで減少して絶滅が危惧された「タンチョウヅル」でしたが、1952年に「特別天然記念物」に指定されてからはその数を回復。現在ではおよそ1800羽が生息し、逆に増えすぎたために、農業被害など新たな問題が生じてきています。

頭頂部が赤い理由

「タンチョウヅル」の頭頂部が赤く見えるのは、その部分の羽毛が赤いからではなく、そこだけ皮膚がむき出しになっているからです。

「タンチョウヅル」の皮膚はデコボコしていて、アップで見ると少し不気味に見えます。ちなみに、このデコボコは正式名称で「肉瘤(にくりゅう)」(=いわゆる「こぶ」)と言います。

なぜ頭頂部が「赤い」のかは、はっきりと分かっていませんが、おそらくはニワトリの「とさか」と同じく「体温調節+メスへのアピール」の役割があるのではないかと考えられています。




おわりに

いかがでしたでしょうか。

では、最後に内容をおさらいしましょう。

「鶴(ツル)」はツル科ツル属の総称で、日本には7種類の鶴が生息している。

鶴の一声」は「会議の場での権威者の大きな発言」のことを意味し、「鶴は千年、亀は万年」は「長寿やめでたいことへの祝意」を示す。
縁起の良い鳥である「鶴」は、古くから振り袖の柄(吉祥文様)として用いられてきた。
神社に奉納された折り鶴が由来の「千羽鶴」は、病気回復(由来は千人針)必勝祈願、平和の象徴(由来は原爆の子の像の佐々木貞子さん)の意味を込めて折られている。
タンチョウヅル(丹頂鶴)は頭頂部の赤色が特徴的な鳥で、生息数が少ないことから、かつては国の「特別天然記念物」に指定されていた。

昔話の題材にされたり、千円札の裏側に描かれたりと、日本人にとって馴染みが深い「鶴(ツル)」ですが、その詳しい生態や特徴となると、意外と知らないことも多かったのではないでしょうか。

「鶴」には他にも、「鶴の舞」「鶴の恩返し」など、関連する言葉がたくさんあります。今回の記事ではすべて紹介しきれなかったので、興味・関心がある方はぜひご自身で調べてみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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