
こんにちは、
りんとちゃーです。
皆さんは、重松清という作家を知っていますか?
直木賞を受賞した代表作「ビタミンF」をはじめ、短編・長編ともに数多くの小説を執筆している重松清。
感受性の高い「少年少女」はもちろん、傷つきやすい大人も思わず涙する感動作がそろった彼の作品には、人の複雑な感情を繊細に描いたものが多く、傷ついたり・悩んだり・立ち直ったりと、ありのままの姿を見せる登場人物たちの存在も大きな魅力になっています。
今回は、そんな重松作品の中から、比較的短時間で読むことのできる短編小説にしぼって、私個人がおすすめする本7冊を紹介したいと思います。
記事では以下のことをまとめています。
■おすすめ短編小説7つの収録作品と簡単な内容紹介
■重松清のプロフィール
紹介文を参考にしながら、ぜひお気に入りの一冊を見つけてください。
おすすめ短編小説
カレーライス
【Amazon.co.jp】カレーライス 教室で出会った重松清 (新潮文庫)
■収録作品
・カレーライス
・千代に八千代に
・ドロップスは神さまの涙
・あいつの年賀状
・北風ぴゅう太
・もうひとつのゲルマ
・にゃんこの目
・バスに乗って
・卒業ホームラン
小学校6年生の国語の教科書に掲載されている「カレーライス」を含め、9編が収録されている精選短編集です。
父親に素直に謝れない少年の心の葛藤を描いた表題作「カレーライス」に始まり、親友と大げんかして仲直りできないまま正月を迎える「あいつの年賀状」、入院した母親のお見舞いのために勇気を出して一人でバスに乗る「バスに乗って」など、重松清の代表作の中から選び抜かれた至極の名作が詰まった短編集で、まだ重松清の小説を読んだことがない人に特におすすめの一冊です。
■関連記事:「カレーライス/重松清」のあらすじと感想
きみの町で
【Amazon.co.jp】きみの町で/重松 清 (新潮文庫)
■収録作品
・電車は走る
・好き嫌い
・ぼくは知っている
・あの町で春
・あの町で夏
・あの町で秋
・あの町で冬
・誰かとウチらとみんなとわたし
・ある町に、とても・・
・のちに作家になったSのお話
・その日、ぼくが考えたこと
『2019年夏の新潮文庫100冊』の中に含まれる重松清の短編小説で、多様な登場人物(子どもたち)とともに正解のない哲学的問題にせまる実験的な内容が特徴です。
実際の本を手に取れば分かりますが、ページ数が少なく、文章も平易なので、読書が苦手な子どもでも抵抗なく読むことができます。
事情があってお年寄りに席を譲れない子どもたちを通じて『良いことと悪いこととは何か?』を考える「電車で走る」や、大好きな女の子が別の男の子といると嫌な気分になる少年の『気持ち』を描いた「好き嫌い」、ニュースで報道された悲惨な交通事故やアフリカの飢餓を見て『幸せとは何だろう・・』と考える「その日、僕が考えたこと」など、小難しい哲学を分かりやすいエピソードを交えて描いた作品が多く、好奇心の旺盛な子どもだけでなく、思慮を深めたい大人も熟読できる一冊になっています。
■関連記事:「きみの町で/重松清」のあらすじと感想
青い鳥
■収録作品
・ハンカチ
・ひむりーる独唱
・おまもり
・青い鳥
・静かな楽隊
・拝啓ネズミ大王さま
・進路は北へ
・カッコウの卵
数ある重松清の作品の中で、名作と呼び声が高い人気短編小説の「青い鳥」。
吃音症を持ち、言葉がつっかえてうまく話せない非常勤講師の村内先生には、生徒に伝えたい「たいせつなこと」があります。
言葉にできないことに悩む少女を描いた「ハンカチ」、自分の父親が交通事故の加害者になってしまう「おまもり」、クラスメイトにいじめを行った少年たちに村内先生が罰を与える表題作「青い鳥」、集団生活に息苦しさを感じる少女が学校から逃げ出したいと考える「進路は北へ」など、物語では、様々な悩みを抱えた少年・少女たちが、そばに寄り添って真摯に向き合ってくれる村内先生との出会いを通して、次第に傷ついた心を癒やしていきます。
「ひとりぼっちにさせないためにそばにいること」「言葉にしなければ伝わらないたいせつなことがあること」など、物語で伝えられる村内先生の言葉はどれも珠玉のものばかり。重松清の名作短編としてぜひ読んでほしい作品です。
■関連記事:「青い鳥/重松清」のあらすじと感想
ビタミンF
■収録作品
・ゲンコツ
・はずれくじ
・パンドラ
・セッちゃん
・なぎさホテルにて
・かさぶたまぶた
・母帰る
直木賞受賞作であるこの小説は重松清の出世作とも言える作品で、題名の「F」は、物語を特徴づける英単語の「Family・Father・Friend・Fight・Fragile・Fortune」の頭文字をとったものです。
町でたむろする少年グループに『こぶし』を挙げて注意したことをきっかけに父親が息子と向き合う「ゲンコツ」や、万引きをおかして警察に補導された娘の知らない側面を見て苦悩する「パンドラ」など、物語では多種多様なエピソードが紡がれ、そこからあふれ出る言葉のビタミンに元気や勇気が湧いてくる、そんな不思議な力を持った小説になっています。
■関連記事:「ビタミンF/重松清」のあらすじと感想
また次の春へ
【Amazon.co.jp】また次の春へ/重松 清 (文春文庫)
■収録作品
・トン汁
・おまじない
・しおり
・記念日
・帰郷
・五百羅漢
・また次の春へ
東日本大震災をモチーフにした連作短編集で、被災者・家族・支援者それぞれの視点から見た震災のリアルが描かれます。
憤りを覚える人や、やりきれなさを感じる人、必死に立ち向かおうとする人など、悲劇的な厄災に対する人々の思いはさまざまです。
母親が他界して、残された家族の新しい家庭の味となる父親の「トン汁」、被災したふるさとの町を訪れて、自分がよそ者だと感じる「おまじない」、『また明日』と思って本にしおりを挟んだまま二度とそれが叶わなくなる「しおり」など、本作では多様なストーリーが続けざまに展開されます。
未曾有の大震災から月日が経ち、人々の記憶から薄れはじめた今だからこそ読んでおきたい一冊です。
■関連記事:「また次の春へ/重松清」のあらすじと感想
せんせい。
【Amazon.co.jp】せんせい。/重松 清(新潮文庫)
■収録作品
・白髪のニール
・ドロップスは神さまの涙
・マティスのビンタ
・にんじん
・泣くな赤鬼
・気をつけ、礼。
2008年に「気をつけ、礼」の題で刊行され、2011年に「せんせい。」に改題された短編小説で、2018年公開の映画「泣くな赤鬼」の原作にもなった作品です。
私たちにとって恩師と言える先生。そんな先生の教えは、大人になった今だからこそ違った気持ちで受け止めることができます。
本作では、そんな教師と生徒をめぐる6つの物語が描かれます。
ロック歌手のニール・ヤングになりきり生徒に『ロックすること』を教え諭す「白髪のニール」、クラスメイトにいじめられた生徒が、避難した保健室で安心できる保健の先生に出会う「ドロップスは神さまの涙」、教え子の中に生理的に嫌悪する子どもがいて、彼にしたことをずっと後悔し続ける「にんじん」など、どれも印象深いものばかりです。
皆さんにとっての恩師・先生は誰ですか?
子どもの頃の教えは、心の奥に根付いていつまでも忘れないもの。学生だった当時を思い出しながら、時間をかけて読みたい一冊です。
■関連記事:「せんせい。/重松清」のあらすじと感想
卒業
■収録作品
・まゆみのマーチ
・あおげば尊し
・卒業
・追伸
表題作の「卒業」をはじめ、精選集にも収められた名作の「まゆみのマーチ」が収録された中短編で、新たな旅立ちに向かう4つの家族の『卒業の物語』が描かれます。
死を間近にした母親の病床で妹のまゆみと再会し、彼女との話を通して息子の亮平と向き合う手がかりを見出す「まゆみのマーチ」、学校で長年教師を勤めていた父が末期がんに冒され、その父を家で看取る「あおげば尊し」、自らの命を断つことに人生の価値を見出だした一人の男と残された家族の苦悩を描いた「卒業」、頑なに義理の母親を拒んでいた主人公が亡き母親から卒業し、その存在を受け入れる「追伸」の4つのまったく違うテイストの『卒業』の物語が描かれ、いろんな意味で深く考えさせられます。
重松清の長編小説に挑戦する足がかりとして読んで見てはいかがでしょうか。
■関連記事:「卒業/重松清」のあらすじと感想
著者「重松清」のプロフィール
▼重松 清(しげまつきよし)▼
■人物・略歴
1963(昭和38)年、岡山県久米郡久米町生まれ。中学・高校時代は山口県で過ごし、18歳で上京、早稲田大学教育学部を卒業後、出版社勤務を経て執筆活動に入る。現代の家族を描くことを大きなテーマとし、話題作を次々に発表する。
■受賞歴
・1991年
『ビフォア・ラン』でデビュー。
・1999年
『ナイフ』で坪田譲治文学賞、同年『エイジ』で山本周五郎賞を受賞。
・2001年
『ビタミンF』で直木賞受賞。
・2010年
『十字架』で吉川英治文学賞受賞。
・2014年
『ゼツメツ少年』で毎日出版文化賞を受賞。
■主な作品
『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『きみの友だち』『カシオペアの丘で』『青い鳥』『くちぶえ番長』『せんせい。』『とんび』『ステップ』『かあちゃん』『ポニーテール』『また次の春へ』『赤ヘル1975』『一人っ子同盟』『どんまい』『木曜日の子ども』など多数。
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